救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
「やったー! ……はーっ! もう本当に、死ぬかと思ったよ! 蜘蛛に食べられて死ぬのは嫌だったんだー! 怖かった! 庭師のおっさんは、怖そうだしさ……どこかに行っている蜘蛛も、そろそろ帰って来るかもしれないと思っていたから、お姉さんは命の恩人だよ! 名前は?」

「サブリナよ。サブリナ・ラディアント」

 べらべらとまくし立てる彼の勢いに負けるように、サブリナは自己紹介をして、小妖精は満足げに頷いた。

「サブリナ。僕は小妖精のパックだ。命の危険を助けてもらって何なんだけど、お腹がとっても空いてるんだよね。何かお菓子持ってる?」

 平気な顔をして図々しい要望をしたパックに、サブリナは思わず吹き出して笑った。

「ふふふっ。そうね。お腹が空いたわよね」

 笑顔で口を隠したサブリナに、パックは苛々とした様子で手足を動かした。

「もー!! 何だよ。なんだか、失礼だなあ。僕は朝露を浴びようと出て来た早朝から、ずーっと!! これまで、蜘蛛の巣に捕えられていたんだよ! お腹が空いたんだよ!」

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