まだ誰も知らない恋を始めよう
 卒業までの1年は、あの頃のフィンが口にした通りに、2人で色々な所へ行った。

 オムニバスの2階席に揺られて王都を巡り。
 藍色のドレス(恥ずかしながら、フィンの瞳の色です)を贈られて、ペンデルトンの周年パーティーにも参加した。
 毎週日曜の中央市場の売り切り1時間前に現れるわたしとフィンは有名になり、あちらこちらのお店でサービスをして貰った。
 

 夏にはお母様のご実家の伯爵領まで行き、彼の思い出のひまわり畑を2人で見た。


 太陽の下、一面に広がる黄色、薄茶、薄緑、深緑……圧倒的な光と鮮やかな色の洪水に言葉を失ったわたしに、何故かフィンが得意気な顔をする。


「エル、これが君の瞳だ」

 ここは、ひまわり畑よね? 君の瞳?
 ちょっと、何言ってるか、分からない。


「君はこのひまわり畑の妖精だ」

 確かに蜂がブンブン飛んでいるけど、わたしが蜂みたいに落ち着きが無い事をからかっているんじゃないよね?
 

 けれど、こんな風にフィンが時々ファンタジーな感じになるのはお馴染みなので、もうわたしも慣れたものだ。

 ただ黙って微笑んで、彼に寄り添う。

 相変わらず、変な人、と思いながら。


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