まだ誰も知らない恋を始めよう
 ……フィニアスは、パーティーに女性をエスコートして行かなかった。
 それはたまたまマーゴット・クレイズの都合がつかなくてだったのかもしれないけれど、彼だったら別の女性も用意出来たはずだ。
 それなのに、1人で参加した。 


 ただ、それだけのことなのに、安堵している自分がいる。
 おかしい、おかしい、わたしはどうしちゃったの?
 フィニアスが……彼が
「その瞳をずっと見つめていたい」なんて、言うから。
「これからは俺が守ります」なんて、簡単に誓うから。

 誰にでも愛想がいい彼だから、多分無自覚でそんな風に口に出したんだろうけれど。
 そんな『これから』があるみたいな言葉は聞かせないで欲しい。
 わたし達には『これから』なんて、無い。

フィニアスがあんなに熱心に褒めてくれたのは、わたしが持ってるマッカーシーの力だ。
 間違えるな、彼は純粋にそれに憧れているだけ。


 そんなわたしの動揺を知ってか知らずか。
 兄と彼の、ふたりの会話は続いていく。


「中央広場は週末の日中なら、何かしらイベントを開催しているが、夜間は無人だろうな……目撃者は期待出来ない。
 まず、お前を誘い出したフレディは門限がある未成年の女性連れだったし、犯人ではないと思えるな」

「俺もそう信じてます。
 彼は水曜日にうちに来て。
 月曜火曜と、大学を休んでる俺の様子を尋ねに来てくれましたし」
 
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