まだ誰も知らない恋を始めよう

26 思い込みで先走った彼とわたし

 それがすごく気になったけれど、フィニアスと兄の会話に割り込む事は出来ない。


「それでなんですけど、もしかしたらこいつかも、と目星をつけた奴がいまして。
 俺の従兄で、ホテルの総務にいるアボットという男なんですが」

「ロジャー・アボットか?」

「モーリス卿もご存じなんですか?」

「ご存じという程ではないな、個人的な付き合いは無いし。
 王都大学でも1年上だったし、俺は外国語を専攻したから学部も違う。
 ただ、各ホテルのドナルド・シーバスの会食は俺が電話で予約を取る。
 ペンデルトンは外務省担当のアボットが電話対応をするし、当日の会食前には挨拶に来るから、その時に顔を合わせるくらいだけだが」

 ホテルでの会食、と聞いて。
 口を出さずにはいられなかった。
 

「繋がった!
 ロジャーは、ドナルド・シーバスと何度も会ってる!」

「接待なら、先週も確か来られてましたよね?
 個室を取られて食事をされてましたよね?
 あの時も、ロジャーが挨拶に来てました?」
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