この5人が世界をすくうーー!?

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そんなことを知らないなそでいは、家に1人でいた。
 偉い人が変わってからというもの、世界はまるで変わってしまった。
 優れた能力をもつほど偉い、というカンジになってしまったのだ。
 友だちも、妹も、両親までもがそう考えるようになってしまったのだ。
 sぷなってからのなそでいの生活は地獄そのものだった。
 ごほんはあまり食べさせてもらえないし、外へ行かせてくれない。最近ではもう、話してもくれなくなってしまった。だんだんと事態は悪化していき、ちっぽけな能力の子は、酷い目に遭わされるようになった。両親の能力は、まあ優れている方だ。
 妹のは平均ぐらいだけど、なそでいに比べたらマシ。今はもう、家族すら目も合わせてくれない。今の界民は10年前とは全く変わってしまった。王の威力は半端ないなだ。
 なそでいは1人でずっと、早く変わらないかと考えていた。
 こんなのおかしいよ!酷い…酷いよ…!
 時々泣いたりもした。ごはんだって、妹のより圧倒的に少ないし、おかしはダメ。一言も話してくれないし、外へも行けない。だんだんとなそでいの体調は悪くなっていった。
 ある日、両親と妹がいつもどおり外へ出ていくのを見た。そして、ふと思った。
 こわいけど、外へ出てみようかな。さすがに、体力ヤバいし、外の空気も吸わなきゃね。
 勇気を振り絞って、外へ出てみた。外の空気はおいしくて、気もちよかった。
 やばいくらいに体力が落ちていて、ちょっと歩いただけでだいぶ疲れた。
「ハア…どれだけ外へ出ていなかったけ?ってか、誰とも話してないから、声がだしにくい…」
 ぶつぶつ独り言を言ってると、1人の子が駆けよってきた。全身がビクッと震えた。
 何かされる、どうしようこわい…。
 逃げようとすると、その子が駆けよってきた。
「だいじょうぶ!?体震えてるけれど…。」
 その子は裏返った声で言った。
 何とか声を振り絞って、返答した。
「やめて…やめ…。」
 その子は裏返った声で言った。
「本当どうしたの?何もしてないよ。」
 体力と心臓がパンクして、なそでいは倒れた。
 1人の女の子はビックリして、急いで家へ運んだ。
 ようやくなそでいは目を覚ますと、そこは知らないところだった。
 血の気が引く気がした。
「やっぱり…何かされる…家へ帰して!」
 なそでいの声にびっくりして、女の子は目を覚ました。
「ああ、よかった。アナタ、道で倒れたのよ。」
 ブルブルするなそでいを見て、
「あら、どうしたの?寒い?暖房つけてんだけどなあ。」
 女の子はエアコンに目をやった。
 ようやく、なそでいの震えは止まった。ココは、危ないところだはないと思ったからだ。それに、女の子はなそでいと同年代くらいで、優しそう。一応、聞いてみた。
「えっと…君は王の家来ではない…?」
 かすれた声で何とか言った。一瞬ぽかんとして、女の子は笑った。
「アハハ、そんなワケないでしょ?何、王たちのことこわいの?」
 その一言になそでいはほっとした。ちょっとの間は気になったが、まあびっくりしたんだろうということにしといた。
「うん。私は…狙われていると思うの。」
「狙われている?アナタが?」
 キョトンとして聞いた。
「そうだよ。だって私、能力ないんだ。」
 ちょっとびっくりしているようだったが、そんなに驚いてなさそうだ。逆に、本人の方がびっくりしている。
「え?驚かないの。」
「まあびっくりはしたけど、そうかなとも思ってたしね。」優しく返事した。
「ならどうして助けたの?こんな…なにもない私を。」
 ちょっと考えてから、にっこり笑って言った。
「アタシね、今の王、大キライなの。今の界民にはとても言えないけれど。オーロラさんの方が、よかったわ。アタシ、ずっとオーロラさんに憧れていたの。ああいう人になりたいってね。能力で決めつけるなんてアタシはいやだわ。」
 ここまで言うと、ふうと息をついた。なそでいは目から涙が落ちた。
「えっ?ごめん…いやだった?」
 戸惑う女の子に、何とか伝えた。
「…違う、…違うの!ありがとう…私も。君みたいな人がまだいると思わなくて…。」
 女の子はにっとして言った。
「もちろん、いるわ。アナタの見てる世界が狭いのよ。まだアタシみたいな人も、たくさんいるわ。」
 その言葉がなそでいの心にすっと響いた。涙が更に溢れてきた。
 よかった、外へ出て…と思った。女の子はなそでいのところを離れて、すぐに戻ってきた。
「コレ、ティッシュ。涙ふいて。」
 なそでいは1枚取ると、ゴシゴシふいた。女の子にゴミ箱に捨ててもらった。女の子もベットに入ってきて、横たわった。
 しばらく経ってから、女の子は喋りはじめた。
「そういや、名前言ってなかったよね?アタシ、リンルンっていうの。アナタは?」
「私はなそでい。」
「へえ、いい名前ね。」
 ちょっと照れくさそうにしながら、返事した。
「そうかな。初めて言われたよ。ところで、君のことは何て呼んだらいい?」
「えー、何でもいいよ。んー、でもふつーにリンルンかな。」
 言い終えると、なそでいの方を見てにこっとした。なそでいもつられてにこっとした。
「分かった。じゃあリンルンで。私は何でもいいよ。」
「OK!じゃあ、なそでいで。」
 顔をなそでいの反対側へ向けた。なそでいもまたつられて反対側を向いた。そして、なぜか小声で聞いてみた。
「ねえ、リンルンはどんな能力もってるの?」
 リンルンも小声で答えた。
「手で触ったものが、凍る能力だよ。」
 へえとつぶやいてから、そっと聞いてみた。
「生物…も?」
「もちろん。どんなに熱いマグマだってね。」
「マグマ!?」
 なそでいは思わず大声を出してしまった。またなそでいの方へ振り返ると、にっと笑って言った。
「あのネコ野郎のこともね。」
 なそでいはちょっと笑ってしまった。リンルンも笑った。それから急に、真面目な表情になって、言った。
「だからといって、いいことばかりじゃない。この能力はアタシのトラウマでもあるの。」
「と、トラウマ…?」
「そうだよ。この話、家族以外知らないんだけど。アナタなら、いいと思うから、話すね。」
「う、うん…。」
 ごくりと息をのんだ。リンルンは深呼吸してから、口を開いた。
「アタシがまだ4、5歳くらいの頃ね。アタシには、両親と1人の兄がいるの。で、お母さんは市長をしていたの。すごい元気で明るい人だった。ドジだし不器用だけど、大好きだったの。」
 一回ふうと息をついて、再び話しはじめた。
「アタシの能力は強くて、人も凍らせてしまうから、いつも手袋をつけていたの。そうすればだいじょうぶだから。で、トラウマになった日、手袋を忘れてしまったの。それで、お母さんと手、つないでしまって…。」
 なそでいの体から冷や汗が流れてきた。
「凍ってしまったの。アタシの目の前で。」
 なそでいの心臓がバクバクと鳴っている。本人が一番そうなってるだろうに。何とか声を出して、伝えた。
「思い出したくなかっただろうに、話してくれてありがとう。辛かったね。」
 今度はリンルンの目から涙が出てきた。なそでいは急いでベットから立ち上がり、ティッシュを取りに行った。戻ってきたら、もうリンルンは泣き止んでいて、寝ていた。ちょっとだけ優しく涙をふいてあげて、なそでいも横になった。
 そして、寝てしまった。



 なそでいが目を覚ますと、お昼の1時を過ぎていた。もうとなりのリンルンの姿はなかった。ゆっくり起き上がって、目をこすると、お腹がギューギュー鳴った。
「ハア…今日の朝はまともに食べてないし、何年かぶりに歩いたから、お腹すいたあ…。」
 声を聞きつけたように、リンルンが戻ってきた。
「ごはんできたよー!一緒食べよ!」
 なそでいの顔が急にぱっと明るくなった。
「うん!」
「でも髪の毛結んでね。ボサボサじゃんwじゃ、下で待ってる。」
 そう言うと、リンルンは下へ行ってしまった。ポケットに入っているゴムを取り出して、1つに結んだ。それからふわあ、とあくびをしてから、部屋を出た。階段を降りていくと、右にリビングが見えた。トボトボ歩いて向かっていると、ごはんのいい匂いがしてきた。お腹も止まず音を立てている。リンルンは奥の方で何かしていた。近よると、向こうも気づいてくれた。洗面所は奥にあった。手をよく洗って、タオルでふいた。いい匂いのするリビングへ戻って、イスにすわった。リンルンも反対側にすわった。いただきますをして、食べはじめた。一気にお腹が満たされ、しあわせな気持ちになった。ごはんはシチューとトーストだった。シチューはあったかくて、寒い体があったまった。しばらく夢中でガツガツ食べていた。こんなにたくさんのごはんを食べたのは、何年ぶりだろうか?全部あっという間に食べおわってしまった。リンルンはびっくりしていた。まだリンルンのは半分くらい残っていた。ごちそうさまをして、食器をシンクに移した。リンルンが部屋で休んでていいと言ったので、なそでいは部屋に戻ることにした。来た道を戻っていくと、部屋に着いた。食べた後すぐに横になると気持ち悪くなるから、ベットにすわった。ごはんを食べた後だからか、疲れたのか、眠くなって、うとうとした。
 気がついて目を覚ますと、なそでいは横になっていた。そしてお布団もかかっていた。
 まだあまり覚めていない目をこすって、時計を見ると、もう3時を過ぎていた。ちょっとぼーっとしてから、ベットから立ち上がった。またお腹がすいたから、おやつを食べたいと思った。またリビングへ行くと、寝ているリンルンを発見した。肩を軽く揺さぶると、すぐに目を覚ました。
「あっなそでい。どうしたの?」
「いや…ちょっとお腹すいちゃって。おやつ食べに。いいかな?」
 すぐにリンルンはにこっと笑って「もちろん。あそこの棚に入ってるから、すきなだけどうぞ。」
 と言ってくれた。リンルンが教えてくれた棚を開くと、たくさん見たことのないおかしや、知ってるおかしがあった。なそでいは1つのおかしを取り、
「私、これ大好き!」
 と言って、テーブルに運んだ。
「それ、アタシも大好き!一緒ね。」
 2人でアハハと笑ってから、おかしを袋から取り出した。しばらくお喋りしながら、おかしを食べた。
 最後の1つはなそでいが食べた。がちそうさまをして、2人で部屋に戻ろうとした時、誰かが来た。
「…その人、お前の友だち…?」
 低い声が聞こえてきた。男の人で、顔はほぼパーカーで隠れていた。背はリンルンより5センチくらい高かった。
「うん。そうだよ。何か?」
 リンルンがその人をニラんで、冷たく言い放った。
「…別に?…じゃ。」
 それだけ言うと、また元のところへいなくなってしまった。
「えっと…あの人は?」
「ああ、アイツ?アタシの兄、アニルン。引きこもり不登校野郎。」
 ちょっと言いすぎじゃ…と思ったが、何も言わなかった。
「お兄さん、何年生?大学生??」
なぜかリンルンはむっとして返した。
「大学2年生。」
「そ、そっか…。えっと、仲、悪いの…?」
「まあまあかな。よくはないね。さ、戻ろ。」
 強制的に会話はおわり、2人で部屋へ戻って行った。
 部屋に着くと、2人は並んでベットにすわった。もう4時だった。リンルンはすぐに立ち上がり、
「あっお風呂入れなくちゃ。待ってて。」
 と言っていなくなった。1人きりになったなそでいは、ベットに横たわった。そして、また寝てしまったようだ。
「…そでい、なそでーい!」
 リンルンの声で目を覚ました。重たい目を何とか開けて、体を起こした。
「ん…何?」
「お布団沸いたの!一緒入ろ。」
 ボサボサの髪の毛、裸足のまま、お布団場へ入った。初めての、人の家のお布団。何だかドキドキしてしまった。今まで何度も友だちの家に行ったことはあったが、泊まったことはない。友だちが自分の家に泊まることはあったけど。
 まず体を洗って、それから髪の毛を洗った。そして、お風呂へ入った。
 もうここ数年、ずっと1人で入っていたから誰かと入るのが新鮮に感じた。お風呂で一緒に歌ったり、喋ったりするのは、最高に楽しかった。なんやかんやもう30分も入ってしまっていた。さすがにのぼせてきて、2人で一緒に出た。洗面所で体をふいて、服に着替えた。それから髪の毛を乾かして、やっとのことで洗面所から出た。なそでいは髪の毛が長いから、洗うのも乾かすのも、結構時間がかかってしまう。(セットも)。リビングで少し水を飲んで、テレビを見てから、部屋に戻った。リンルンは、長風呂しすぎだと、アニルンに怒られていた。部屋ではヒマだった。ただ散歩するだけだと思っていたから、何ももってきていなかったし、何よりも勝手に家出してきたようなもんだ。両親や妹心配してるだろう。
 いや、してないか。どうでもいいもんね、私なんて。
 そう思うと、気分がずーんと沈んだ。そんな時、急にリンルンが話しかけてきた。
「ねえ、一緒にDVD観ない?」
 なそでいの気分が一気に上がった。
「うん!観たい!」
 リンルンと一緒にDVDを観ることになった。
 終わった頃には、もう6時近かった。ちなみに2人が観たのは、恋愛ドラマ(映画版)
「すきすぎるんです。」。ちょっと映画の感想を言いあってから、リンルンは夕はんの準備をしにリビングへ行ってしまった。1人取り残されたなそでいは、またヒマになった。
 そうだ、この部屋の探索でもしてみよう!
 と思い、探索してみることにした。意外と楽しくて、リンルンのことがもっと知れた気がした。でも30分でもう全部見おわってしまって、またヒマになってしまった。なんとなく外をぼーっと見ていると、外に妹らしき人がらが見えた。
 一瞬ドキッとした。
 もしかして、心配して探しに――?いや、それはないか。ただ、サッカーの練習でもしに行くんだろう。
 と思ったが、妹はサッカーボールをもったいなかった。しかも、やっぱり何かを探してるようだった。やっぱり、もしかして――!?
 なそでいの心臓がバクバクしはじめた。そんな時に
「ごはんできたよー!」
 と呼ばれてしまった。
「あ、う、うん。今行く!」
 急いで窓のカーテンを閉めて、部屋を出た。リビングに行くと、またいい匂いが漂っていた。洗面所でよく手を洗って、タオルでふいた。タオルはリンルンと同じものを使わせてもらってる。歯ブラシも、コップも。イスにすわって、またリンルンも反対側にすわった。いただきますをして食べはじめた。そして、もっとリンルンのことを知りたいと思い、質問することにした。
「何年生?」
「中学2年生だよ。」
「私も!」
 ――
「好きなものは?」
「うーん…丸いものかな!」
「たとえば?」
「うーん…ドットのスカートとか。」
 ――
「お父さんは働いてるの?」
「もちろん。お父さん市役所関係者なの。」
 ――
「誕生日っていつ?」
「んー、わすれた⭐︎」
「え?」
「ゴメン。」
 ――
「好きな色は?」
「水色!髪の毛もそうだし!」
「地毛なの?」
「そうだよ。中学生、染めれないじゃん。」
 ――
「好きな食べもの!」
「アイスが好き♡特にソーダ!」
「私もアイス好きだな♡ソーダおいしいよね!!」
 そんなこんなであっという間に、ごはんを食べおわった。
「色々質問答えてくれてありがとう。リンルンのこと、よく分かったよ。」
「こちらこそ!」
 ごちそうさまをして、再び部屋に戻った。またベットに2人並んですわった。
「そういや、まだお父さん帰ってこないんだね?」
 ふと聞いてみた。
「うん。役所に泊まる時もある。ほぼ家のことはアタシがやってるの。」
「えー凄いね!ごはんもおいしかったし。」
「え…そうかな?ありがと。」
「えっと…アニルンさんとは、一緒に食べないの…?」
 またリンルンの表情がむすっとなった。
「アイツ、部屋で1人で食べんの。だからアタシ、基本1人で食べてるの。」
「えー、寂しいね…。」
「まあ、慣れてるけどね。ちなみに、お父さんのお弁当作ってんのも、アタシ。」
「へーえ、偉いねリンルン!」
 思わず拍手してしまった。
「いやいや当然だよ〜!ま、もっと褒めてもいいよ〜!」
 満更でもなさそうに、頭をかいた。そして急に、
「そういやさ、ちょっと一緒に見たいのあったんだった!ちょっとおまち!」
 と言って、いなくなってしまった。1分も経たないうちに戻ってきて、びっくりした。リンルンの片手に、スマホがある。
 きっとスマホを取りに行ってたのだろう。
「おまたせー!またちょっとおまち!」
 片手のスマホを取って、もう片方の手でスマホを触っていた。そしてまたベットにすわった。
「えっとー…あっコレコレ。おすすめのイーチューバーいてね。見よ!」
 返事する間もなく、リンルンは動画を再生した。動画はメイクの動画だった。なそでいもハマって、しばらくその人のイーチューブを見ていた。
 あとはなそでいのオススメのも見たりした。あっという間に楽しい時間が過ぎ、もう夜中の10時30分を過ぎていた。一応明日の学校は早いから、もう寝ることにした。部屋の電気を消してお布団に入ってからも、中々眠れなかった。リンルンはすぐに寝てしまった。やっぱり、自分の家の枕じゃないからだろうか?(もう3回ぐらい寝たけど?)。眠れない間、色々と考えていた。
 はあ、今日は何だか楽しかった。友だち?もできたし、何だか心がリフレッシュされた。明日はどうしよう?リンルンは学校に行くらしいから、いなくなっちゃうだろうし…。まあアニルンさんはいるみたいだけど、別に仲良くないし…。けど私が学校行っちゃダメだよね?でも1人ってヒマだなー。また外歩いてみようかな?いや、シンプルに家に帰る?でも、せっかく抜け出して来れたのに??うー、でも、両親も妹も、意外に心配してるかな?あー、どうしよ…。
 気がついたら、もう眠ってしまっていた。結局、明日どうするか決まらず、次の日になってしまった。
 目を覚ますと、窓から太陽の日が差しこんでいて、眩しかった。となりにはもう、リンルンがいなかった。
 きっと朝ごはんを作っているにだろう。ふわあ…とあくびをして、伸びをした。
 重たい体を何とか起こして、着替えた。寒いからちゃんとくつ下もはいて、リビングに向かった。リビングのそばに行っても、今までみたいに、いい匂いはなかった。
 あれ、朝ごはんまだなのかな…?
 リビングに入ると、リンルンの姿が見当たらなかった。何かイヤな予感がした。とりあえず顔と手を洗って、髪の毛を整えた。リビングに戻り、リンルンを探そうと思うと、冷蔵庫に紙が貼ってあるのに気がついた。取って読んでみると、手書きの字でこう書かれていた。

 ごめんh、なそでい。アタシ、王の家来たちに連れていかれたの。アナタのことは守ったよ。アニルンにも伝えといて。ごはんは自分で適当に作って。
 いつか、助けにきて。あと、1人じゃ危ないから、アタシの友だち3人を連れてきて。
 名前は後藤桃、黄玉たま、なるほど。よろしく。

 読みおえてから、血の気が引いた気がした。思わず、
「え?」
 とつぶやいてしまった。
「うそ、リンルン…そんなあ!すぐ行く…!えっとお友だちも…え!?なるほど!?妹!!?」
 なそでいの大声に、アニルンが飛び起きてきた。
「…何だよ、うるせえな…!」
「あっ!アニルンさんっコレ…!」
 しばらくしてから、眉間にしわを寄せたアニルンが、なそでいをニラんだ。
「お前のせいで…オレの妹が…!!」
「ごめんなさい。必ず助けま…」
「今すぐ出てけ!そして助けろ!分かったか!?」
 さっきまでのダルそうなのとは打って変わって、必死だった。
 きっと大切なんだね!そりゃ、そっか。
「はい!」でもお腹がすいたから、何か食べてから行くと伝えると、自分の部屋にいなくなってしまった。冷蔵庫にあるバナナと牛乳を取り出して食べた。急いで歯磨きをして、外へ出た。リンルンの手書きメモをもって。
 まず、自分の家に行って、なるほどに伝えなくちゃ!まだ学校にいってませんように…!
 全力ダッシュしたから、息がハアハアになった。家には、誰もいなそうだった。ガッカリした。家の中に入っても、やはり誰もいなかった。リビングのテーブルに、紙を置いといた。1日ぶりに、自分の部屋へ帰った。やっぱり落ちつく、と思った。自分のベットにごろんとして、ふうと息をついた。
 ハッ…!こんなことしてる場合じゃない!妹待ってる間、他の人探そう!
 急いで自分の部屋を出て、別の紙に友だちの名前をメモした。
 あっリンルンの友だちってことは、みんな学生?じゃ、学校に行って、メモ渡せばいいのでは…!?
 そう思い、急いでなそでいの学校、いや妹の学校へ走った。何とか着いて、妹のクラスの教室へ入っていった。ハアハアする息を整えて、妹に渡した。先生に事情を話したが、中々OKをくれなかった。妹に先に行ってと伝えると、急いで走っていった。妹は運動神経がよく、足が速いので、先生は追いつけなかった。先生が頑張って妹を追いかけてる間に、なそでいは他の友だちを探した。全く分からないので、聞いてみることにした。
「この中に、後藤桃、黄玉たまはいますか?」
 1人の女の子がそっと手を挙げた。その子にすぐにメモを渡した。すると、すぐに立ち上がり、
「助けに行きます!」
 と言ってくれた。なそでいと女の子は手を繋なぎ、教室を出た。クラスメイトは、その様子を、ただ呆然と眺めていた。学校を出ると、2人で立ち止まって、息を整えた。それから
「どうします?なるほどさん、追いかけますか?」
 なそでいがこくんとうなずくと、女の子もうなずいた。
「そうしましょう。ただ、どこへ行ったんでしょう?」
「うーん…多分家かな?着いてきて!」
「えっなるほどさんの家知ってるんですね?」
「まあね。私、姉だし。」
「えっっっ!?」
 女の子の叫び声と共に、なそでいは駆けだした。女の子も慌てて駆けだした。しばらく走って、家に着いた。息を落ち着かせてから、インターフォンを鳴らした。もしかしたら妹がカギを閉めている場合もあるからだ。女の子に気がつくと、妹は急いでドアを開けてくれた。一緒になそでいも入った。みんなでリビングのイスにすわり、話し合うことにした。こんな時なのに、妹はなそでいのことを見もしない。思いきって話してみたが、ムシされた。ついになそでいは頭にきて、妹に怒鳴った。
「ねえ、今、大変なことになってるんだよ?こんな時にもそういうことするの?話し合わなきゃ、協力しなくちゃ!」
 それでも妹は、全くなそでいの方を見ないで、黙ったまま。
「ねえ、聞いてるの?もう、やめようよ、こんなこと!」
 そして、何年かぶりに、妹は姉の方を見た。そして、口を開いた。
「何怒ってんの?能力なしが。アンタのせいなのに、威張んないで!アンタなんか、いなけりゃ…。」
 さすがに止めなきゃと思ったのか、女の子が割り込んできた。
「ちょっと言いすぎです!今はそんなことどうでもいいんです。リンルンさんを助けなくちゃ。」
 なそでいはショックで何も言えなかった。
「やっぱり私なんて…私なんて…いらないんだ。能力なしだもんね!もう…いやだよ…!」
 ガマンしていた涙がぽろぽろ沸いてきて、思っていたことが次々に口から出てきた。
「おかしいよ…何で…私だけこんな?能力でなんて不公平だ…。」
 そんななそでいを見て、2人は思わず立ち止まってしまった。しばらくわんわん泣いて、落ち着いてきた頃、そっと女の子は言った。
「わたしもおかしいと思いますよ。やっぱり、オーロラ姫でなくてはね。」
 その言葉に、ちょっと救われた。そして妹が、もう何年も見せていない笑顔で言った。
「あたしも。」
「え…?」
 思わず、なそでいから声が漏れた。
 妹はふっと笑ってから、
「そーでしょ。だって、あのリンルンと友だちなのよ?能力で決めつけるなんて、バッカよねえ。」
 また何も言えなかった。今度はショックはなかったけど、驚きでいっぱいだった。
「じゃあ、何で私のこと……?」
 妹の顔が沈んだ。
「ごめんね、お姉ちゃん。両親にそうしろって言われてて。反発したんだけど、そうしないと退学させるって言われて…。本当にごめん。助けてあげたかったのに…辛かったよね!」
 またなそでいの目から、涙が溢れた。安心と、嬉しさの涙だった。
「うん…辛かった…いやだった……。」
 泣きながら、何とかそう伝えた。ちょっとして、なそでいの涙と気持ちは収まった。
 そして、再び話し合いを行なった。3人でどうするか色んな案を出し、とりあえず、もう1人の家に行くこととなった。なそでいはしばらく、女の子の家に泊まることになった。リンルンの家でもと思ったが、さっきの感じ、アニルンが入れてくれなそうなので、女の子の家にした。
「もう1人の子の名前は確か…後藤桃だっけ?その子はどこに住んでるの?」
 2人が
「任せて!」
 と同時に言ってきたので、思わず3人で笑ってしまった。
 なそでい&なるほどの家を出て数分で着いた。
 こんなに近くだったんだー
 となそでいはびっくりした。インターフォンを妹が鳴らすと、知らない女の子が出てきた。顔には何かのキャラクターの仮面をしていた。
「やっほ、ももりん。」
 妹が独特なニックネームで呼ぶと、返してくれた。
「やっほう。さ、家に上がって。」
 知らない子の家に上がると思うと、なぜか緊張してきた。
 玄関にはたくさんの絵画が飾られており、どれも見たことのある有名なものばかりだった。リビングにも飾ってあった。中には、マンガのようなテイストのイラストもあった。みんなでリビングのイスにすわった。
「えっと、黒髪の子は?初めましてだよね?」
「これあたしの姉のなそでい!」
「え!お姉さんいたんだ?まあ、そこはいいや、何の用?」
「重要なことだよ。」
「え…重要?」
 仮面をしてる女の子はごくりと息をのんだ。
「友だちのリンルンが王の家来に捕まったの!」
「ええー!?」
 リビング中に、仮面の女の子の声が響き渡った。
「このメンツで助けに行こ、ね?」
「もちろん!!いつ?」
「やった!え、今日よ?」
「え?きょ、今日!?確かに早いほうがいいけど、心の準備が…!」
「よし、行こ!」
 強引に仮面の女の子を連れ出し、他2人も着いていった。
 家をみんなで出た途端、誰かのお腹がぐーっと鳴った。
 なそでいだった。
「あ、ご、ごめん…。」
 その後に3人も鳴り、みんなで笑った。
「とりあえず、家でお昼ごはん食べてからにしよ、ね??」
 仮面の子の提案に、みんな賛成した。絵画もりだくさんのリビングで、トーストを食べた。
「んー、おいひ…。朝バナナしか食べてなくて…。」
「えっ!?お姉ちゃん食いしん坊なのに…!?」
「ちょっと!仕方なくね…。」
 こんなやりとりをしたのも、何年ぶりだろうか?また前みたいに戻れて、ちょっと、リンルンのことがあってよかったとも思えた。しばらく雑談しながら、お昼ごはんを食べた。それから歯を磨いて、準備をし、出発した。目的はお城。友だちのリンルンを救うため!お城は真ん中にあって、今いるところからは大分遠い。みんな一応、色々バックに詰め込んできた。どこでも泊まれるように、テントも。食料も。遠いといっても、まあ1週間あれば着く。
 

 
 
  
 
 

  
 
 

  
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 


 
 

 
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