リアル・アクション・アプリ
☆☆☆

先生が呼んでくれた救急車が到着すると学校は物々しい雰囲気に包まれた。
中条先輩が泡を吹いて倒れていた姿が目の裏にこびりついて離れない。

「中条先輩、大丈夫だよね? 中条先輩までいなくなったら私……」
教室のすみに座り込み美穂がガタガタと体を震わせる。

中条先輩がどうなったのかわからないけれど、無事を祈ることしかできない。
「中条先輩、ミス3だったんだな」
ぽつりと呟いたのは昇だった。

「そうだね。万引とカエルと、あとはなにを失敗したんだろう?」
「それなら検索してみればわかるかも」
そう言ってスマホを取り出したのは知里だ。

知里は【R‐アプリ】を起動して、みんなが投稿している動画を表示した。
そこに中条先輩の名前を打ち込んで検索をかけたのだ。

すると先輩が今まで投稿して来た動画が何枚か出てきた。
「これは最初の逆立ち動画だね」

知里が試しに動画を再生してみると、中条先輩は照れて真っ赤になりながら教室内で逆立ちをしている様子が流れ始めた。

動画を撮影している友人から『なにやってんだよお前』と、ヤジを飛ばす声も入っている。

この頃にはまさかこんなことになるなんて思っていなかった。
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