セフレな二人は恋人未満
「裸で寒くないですか」
「寒いよ」
「やっぱりかっこいいな」
「なにが?」
「あなたが。そうやって裸で真っ直ぐに立って水を飲んでいるあなたが、たまらなく素敵だ」
「また抱きたくなったのなら、素直にそう言えばいいのに」
「また抱きたくなりました。だからこっちへ来てください」
「タバコを吸ってからね」

 ベッドからジッと見つめているきみを無視して、ベッドと反対側にある扉の前に立つ。扉の裏にはテラス窓があるはずだ。さらにその向こうはバルコニーが。

 こういうホテルは、外から見えないように内側から窓を塞いでいる。それが私には息が詰まりそうで好きじゃなかった。

 扉を開けた。すると予想どおり窓の向こうにバルコニーが見えた。その向こうにはビルの明かり。夜景なんて洒落たものじゃない。ただの都会の夜だ。

「まさか、その格好で外に出るの?」
「外には出ない。外の空気を吸いたいだけよ」
「寒いです」
「確かに窓を開けたら寒いけど…….」

 そっと後ろから抱かれた。
 音もなく近づいたきみの腕が優しく私を抱いた。

「そうじゃない。僕が寒いんだ。あなたがいないと寒くて寂しい」
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