七番目の鏡子さんと招き猫
料理対決と空っぽの器
見事に演劇部を悩ましていた怪異を退治したの!
これ、すごいでしょ。わたし、褒められてもいいくらいでしょ?
……なのに、どうしてまた、わたしは、生徒会室で紅羽に叱られているのか。
「オカルト研究部が、どうしてあんなところで騒いでいたんだ」
「だから、あれは、わたしの声じゃなくって、怪異の断末魔だったんだって!」
全然聞いてくれないんだけれど。
「そんな訳があるか!」
「だって……」
「いいか? この世には、物理法則に則らないものなんて、存在しないんだ」
「いや……でも……」
「問答無用!」
いや、紅羽の後ろには、ガッツリ強そうなお姉さんが笑っているのだけれども?
こんなに強そうなお姉さんが、どうして見えないのか。
「あのさ……紅羽……」
「馴れ馴れしいぞ! オカルト研究部!」
「いや、だって、中条院って呼ぶには、黒羽先輩と混同して面倒じゃない」
そう。忌々しいことに、尊敬する黒羽先輩と紅羽は兄弟なんだ。
だったら、オカルト研究部をもっと優遇してくれてもいいと思うんだけれども、怪異の全く見えない紅羽は怪異を全否定する。
そして、怪異全否定だから、オカルト研究部にも、こんなに厳しいのだ。
「だからってため口で話していいわけではないだろうが」
「そこは、尊敬できない紅羽に敬語を使いたくないし」
どこに、敵対している人間を敬語で呼ぶ奴がいるのだろう。
わたしには、あり得ない。
「だからさ、その、紅羽の後ろにさ、怪異が……」
わたしが怪異さんのことを口に出した瞬間に、怪異が、恐ろしい形相でわたしを睨む。
え、うそ。睨まれただけで、息が詰まって動けなくなる。
「にゃあ!」
ミタマちゃんが、わたしと怪異さんの間に立ってくれる。
その途端に、わたしの呼吸は、正常に戻る。
「どうかしたか?」
全くこの緊迫したやりとりが見えない紅羽が首をかしげる。
「いや……何でもない」
どうやら、この強力な怪異さんは、黙っていろと言っているらしい。
わたしでは、何ともしようがない。
「ともかく、オカルト研究部は、これ以上他部活には迷惑をかけないように」
紅羽に散々言われっぱなしのわたし。
だけれども、仕方ない。
「はぁ~い」
これ以上ないくらいに気の抜けた返事をして、生徒会室を去った。
◇ ◇ ◇
「ともかく、今回は借金が増えなくて良かったよ」
はぁ……と、わたしは、ため息をつく。
「しばらくは、大人しくしていた方が良さそうだわ……」
そんなことをブツブツ言いながら、いつもの階段下へ戻ってきたら、誰かいる。
「あ、ほら。戻って来た」
田沼君が、わたしを紹介する。
わたしの方を見て、ペコリと頭を下げるのは、わたしと同じ一年生の女の子だった。
「えっと……」
「最上八重。調理部に入っているの」
「最上八重さん……ああ、隣のクラスの子だ!」
思い出した。たしか、廊下で何度かすれ違っている。
八重てやとか、八重ぽんとか、そんなあだ名で呼ばれている子だ。
料理上手でノリも良い、いわゆるギャルっぽい子。お弁当も自分で作ってきているという料理好きという噂だ。
「あの! 助けて!」
ウルウルした瞳で懇願されれば、わたしは弱い。
生徒会に目をつけられないように大人しくするという、ついさっきの言葉は、あっさりと消し飛んでしまった。
これ、すごいでしょ。わたし、褒められてもいいくらいでしょ?
……なのに、どうしてまた、わたしは、生徒会室で紅羽に叱られているのか。
「オカルト研究部が、どうしてあんなところで騒いでいたんだ」
「だから、あれは、わたしの声じゃなくって、怪異の断末魔だったんだって!」
全然聞いてくれないんだけれど。
「そんな訳があるか!」
「だって……」
「いいか? この世には、物理法則に則らないものなんて、存在しないんだ」
「いや……でも……」
「問答無用!」
いや、紅羽の後ろには、ガッツリ強そうなお姉さんが笑っているのだけれども?
こんなに強そうなお姉さんが、どうして見えないのか。
「あのさ……紅羽……」
「馴れ馴れしいぞ! オカルト研究部!」
「いや、だって、中条院って呼ぶには、黒羽先輩と混同して面倒じゃない」
そう。忌々しいことに、尊敬する黒羽先輩と紅羽は兄弟なんだ。
だったら、オカルト研究部をもっと優遇してくれてもいいと思うんだけれども、怪異の全く見えない紅羽は怪異を全否定する。
そして、怪異全否定だから、オカルト研究部にも、こんなに厳しいのだ。
「だからってため口で話していいわけではないだろうが」
「そこは、尊敬できない紅羽に敬語を使いたくないし」
どこに、敵対している人間を敬語で呼ぶ奴がいるのだろう。
わたしには、あり得ない。
「だからさ、その、紅羽の後ろにさ、怪異が……」
わたしが怪異さんのことを口に出した瞬間に、怪異が、恐ろしい形相でわたしを睨む。
え、うそ。睨まれただけで、息が詰まって動けなくなる。
「にゃあ!」
ミタマちゃんが、わたしと怪異さんの間に立ってくれる。
その途端に、わたしの呼吸は、正常に戻る。
「どうかしたか?」
全くこの緊迫したやりとりが見えない紅羽が首をかしげる。
「いや……何でもない」
どうやら、この強力な怪異さんは、黙っていろと言っているらしい。
わたしでは、何ともしようがない。
「ともかく、オカルト研究部は、これ以上他部活には迷惑をかけないように」
紅羽に散々言われっぱなしのわたし。
だけれども、仕方ない。
「はぁ~い」
これ以上ないくらいに気の抜けた返事をして、生徒会室を去った。
◇ ◇ ◇
「ともかく、今回は借金が増えなくて良かったよ」
はぁ……と、わたしは、ため息をつく。
「しばらくは、大人しくしていた方が良さそうだわ……」
そんなことをブツブツ言いながら、いつもの階段下へ戻ってきたら、誰かいる。
「あ、ほら。戻って来た」
田沼君が、わたしを紹介する。
わたしの方を見て、ペコリと頭を下げるのは、わたしと同じ一年生の女の子だった。
「えっと……」
「最上八重。調理部に入っているの」
「最上八重さん……ああ、隣のクラスの子だ!」
思い出した。たしか、廊下で何度かすれ違っている。
八重てやとか、八重ぽんとか、そんなあだ名で呼ばれている子だ。
料理上手でノリも良い、いわゆるギャルっぽい子。お弁当も自分で作ってきているという料理好きという噂だ。
「あの! 助けて!」
ウルウルした瞳で懇願されれば、わたしは弱い。
生徒会に目をつけられないように大人しくするという、ついさっきの言葉は、あっさりと消し飛んでしまった。