虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
最悪の日に、最高の出会いがあったなんて信じられない。
「二度と会えないと思っていたら、対鶴楼の仲居として働いているんだから驚いたよ」
「私もです。また会えるなんて思ってもいませんでした」
真矢は自分が本心を伝えられたことで、お互いの気持ちを確認できたことがうれしかった。
会話が弾むと、どんどん誤解も消えて「契約」だけではない関係だと自信が持てる。
ふたりはあれこれおしゃべりしながら食事を楽しんだ。
コーヒーを飲み終えたところっで、岳が胸元から小さなケースを出した。
「君に渡そうと思っていたんだ」
「え?」
「開けてみて」
「これって」
シンプルなデザインの指輪だ。ただし、真ん中にはダイアモンドが輝いている。
「君に送りたかった。きっと似合うと思っていたんだ」
「岳さん。私のために?」
「ああ、準備していた。さあ手を出して」
そっと左手を伸ばすと、岳の大きな手が受け止めてくれた。それから薬指にそっとはめてくれる。
「結婚してほしい」
書類なんて必要ない。契約なんて関係ない。岳の真剣なまなざしが真矢の心を射た。
「私でよかったら、お受けします」
「真矢がいいんだ」
「うれしい」
もうレストランに流れる音楽も、カトラリーの音も聞こえない。
真矢はただ、岳を見つめていた。