虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます


恥ずかしいとか痛いとか、そんな気持ちよりも強いものがある。
自分のどこに眠っていたのだろうと思うくらい、燃えるように体が熱くなるのだ。

爪の先や、髪の毛の一本一本までが岳に触れられることを喜んでいる。

「夢みたい」

「真矢、これは夢じゃないよ」

「んん」

真矢の口から勝手に言葉が飛び出していく。意味あるのかないのか、あえぐように息が漏れていく。

「契約なんかじゃない、君は俺の妻になったんだ」

その言葉を聞いた途端、ひときわ大きな波が真矢を襲った。

「ああっ……」

揺らぐ意識の中で、真矢は「いずれ結婚する」という契約書にあった文言をかみしめていた。

(今、その日が来たんだ)

企画書が完成したら終わりになるのではない、今日からまた新しい関係が始まる。

真矢の心を奪い、体を征服した人。ひとりで生きていくと思っていた真矢を支え、ずっと寄り添ってくれた人。
その人の妻に、真矢はなれたのだ。

(岳さん……)

真矢は岳の広い背に、精いっぱいの力を込めて抱き着いた。

岳を愛することで、真矢は変わることができた。
まだまだ力不足だが、真矢はこれからも岳とともにありたいと思う。



ふたりだけの時間は長く続いた。
やがて力尽きて眠りに落ちた真矢の顔を、飽きることなく岳が見つめていた。



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