虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます


鶴田家での暮らしは、戸惑うことばかりだった。
対鶴楼の敷地に隣接している屋敷は、高級な旅館のイメージを損なわないようなゆったりした和風建築だ。
アパート暮らしだった真矢から見れば、どこも迷いそうなほど広かった。

祖父はすでに経営の一線から引退しており、対鶴楼のトップである支配人は亡くなった父の弟にあたる叔父が継いでいた。
叔父は口数の少ないおとなしい人で、真矢とはあまり関わろうとはしなかった。
どうやら女将を務めている叔母が、家や旅館のすべてを取り仕切っているようだった。

叔父夫婦には陽依(ひより)という、真矢のひとつ年上のひとり娘がいた。
色が白くて、ぱっちりとした大きな目。名前のごとく、皆から愛されて陽の当たる場所にいるのがふさわしい美少女だ。

真矢も一応は鶴田家の血筋だが、陽依が対鶴楼を継ぐと決まったようなものだ。
老舗のひとり娘としてのプライドが高い陽依は、親を亡くした従姉妹のことなど目に入らないようだった。

それにこの町で鶴田家は特別な存在だ。家柄もいいし、従業員もこの町の人ばかり。
家でも学校でも、従姉妹との立場の違いを思い知らされた。

誰も真矢のことなど気にもとめない。
いじめや虐待はないが、叔父夫婦からは放っておかれたし、陽依とは食事も別々という毎日だ。
真矢の心が安らぐ場所は、家にも学校にも、どこにもなかった。


< 14 / 141 >

この作品をシェア

pagetop