虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「旅館が忙しいときは、お手伝いしてくれるかしら。お願いね、真矢ちゃん」
叔母から優しく声をかけられたと思ったら、お手伝いとは旅館の下働きのことだった。
陽依がお稽古事や塾に通っている間、真矢は客室の掃除や調理場での皿洗いなどをする。
そんな環境のせいか、東京で両親と暮らしていた頃は快活な性格だった真矢はどんどん無口になっていった。
周囲からは暗いとか、引っ込み思案だとか決めつけられた。
「あなた愛嬌がないから、あまり表の仕事に向かないわ」
叔母は真矢にひと前に出ないような仕事ばかりを割り振ってくる。
しだいに真矢は、叔母の指示に黙って従っている自分が操り人形に思えてきた。
(このままずっと、もしかしたら一生、ここで働かされるんだろうか)
真矢はまだ未成年だから、今の自分にはなにも出来ないとわかっていた。
でも、このまま叔母に利用されるのは嫌だった。
都合よく対鶴楼のために使われてたくない。そう気がついた真矢は、自立を目指すことにした。
時間がある限り、部屋にこもって勉強した。きっと学んで得た知識は裏切らないと信じて。
(この町を出よう。東京で、ひとりで生きていこう)
その覚悟だけが、真矢に力を与えてくれた。