虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「真矢、ここにいたの」
「陽依」
すっきりしたモダンな柄の着物が、ショートカットの陽依によく似合っている。
半年間明都ホテルで研修を受けた陽依は、今は対鶴楼に派遣された女将として働いているのだ。
「この写真撮影も、営業に使わせてもらうわね」
「何かアイデアがあるの?」
「外国からハネムーンに来られたお客様が、和式の結婚写真を撮りたいって言われるの。参考になるでしょ」
肩の力が抜けた陽依は、別人かと思うくらい落ち着いた雰囲気に変わっている。
対鶴楼の従業員の半数は明都ホテルグループからだし、会計システムも新しくなってすっかり仕事がやりやすくなったようだ。
支配人も明都ホテルから派遣されてきた人材で、宿泊稼働率は上昇し始めている。
ゴールデンウイークからは別館の営業も始まるとあって、ますます忙しくなるだろう。
「都々木部長のおかげで、母も元気になりました。接客業の講師としてあちこち派遣されるのが楽しいみたいです」
「それはよかった。宝の持ち腐れにしたくなかったからね」
叔母の女将としての品や知識は、岳も認めていたのだ。
「新しい買収先を選ぶ先鋒として活躍してもらうよ」
「存分に使ってください」
陽依はクールに答えている。
ひどく落ち込んでいた叔父は、今は明都ホテルグループの保養所の管理人として伊豆で働いている。
ゆったりした環境が性に合っていたのか、ずいぶん明るくなっているそうだ。