虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
真矢と違って、和真は遠藤家でとても大切にされていた。
最初の頃は泣いてばかりいたようだが、祖父母や店の従業員たちに愛されて、見る見るうちに明るい表情になっていった。
和真を残して自分だけがこの町を離れるのは気がかりだったが、遠藤家で大切にされているから大丈夫なはず。
東京の大学に進学したいと話すと、叔母には反対されたが祖父と叔父はあっさり認めてくれた。
幸いなことに学費は父母が遺してくれた学資保険のおかげでまかなえたし、アルバイトをすればなんとかやっていける自信もあった。
東京でひとり暮らしを始めた真矢は、やっと自分を取り戻せた。
もう近所の人たちの目を気にしなくていいし、古い慣習に縛られることもない。
自由に時間を使えるだけで幸せに感じたくらいだ。
大学での勉強も楽しいし、アルバイト先で男友だちも出来た。
あの小さな町で、目立たないよう息をひそめて暮らしていた日々がうそのようだった。
大学を卒業した真矢は、明都ホテルグループへ入社した。旅館でずっと接客業を見ていたから、興味があって選んだ就職先だった。
研修を終えて配属されたのは、グループの中でも最大の明都ホテル銀座だ。
ホテルはとてもきらびやかな世界に見えた。真矢が知っている旅館とはまったく違う空間が目の前に広がっていく。
宴会企画部の所属になった真矢は、パーティーやイベントが連日のように催される忙しい毎日が始まった。
次々に持ち込まれる企画に取り組むのは大変だったが、同僚たちと協力すれば答えが見つかる。
どうやら対鶴楼で裏方ばかりしていた経験が役立ったのか、あれこれ調べてパーティーに必要なものを集めたり、周囲に気を配りながら会場の準備したりする仕事が真矢には向いていたらしい。
(楽しい!)
真矢の中で、仕事がすべてになっていった。