虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
(この仕事があれば、ひとりで生きていける)
両親はすでに亡く、財産もない。それに後ろ盾すらない真矢は、仕事だけが自分を支えてくれると信じていた。
陽依のようにどこにいても一番目立つ存在ではないが、真矢を頼りにしてくれる人だっている。
だから自分なりに努力したし、周囲から喜んでもらえるようにがんばった。
仕事が楽しすぎて、恋愛や結婚にはあまり興味がわかなかった。もしデートする時間があれば、ほかのことに使いたいと思ったくらいだ。
同期の集まりなどには参加したが、個人的に誘われてもピンとこなかった。
「ときめく恋愛も、ゴージャスな恋人もいらない。仕事が一番!」
真矢はかなり本気だったが、周囲からは冗談だと思われてたらしい。
土日が出勤になることが多かったせいか、大学時代の男友達とはいつの間にか疎遠になっていた。
仕事にやりがいを感じ、東京での暮らしに満足していたらあっという間に時は流れた。
上司から評価され、顧客には頼られるようにもなった。気がついたら真矢は二十七歳になっていた。
とても充実した毎日だったが、ある日突然祖父が亡くなったという連絡が届いた。
祖父が心臓を悪くしていたのは知っていたが、こんなに早く逝ってしまうとは思ってもいなかった。
真矢は急いで帰郷した。
高校卒業と同時に離れて以来の町、対鶴楼、そして叔父夫婦と陽依。
どこかぎこちない再会だった。
滞りなく葬儀が終わって東京に帰ろうとしたら、いきなり叔父から遺言状の公開があると告げられた。
「真矢も立ち会うように」
叔母や陽依は不機嫌そうにしていたが、こればかりは断れなかった。