虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
真矢は会場に張り付いて、招待客の様子を見ながらパーティーの流れを確認していた。
招待客の出欠、挨拶の順番、料理や飲み物はいきわたっているか、そして流れる音楽にまで気を配る。
ホテルの威信をかけた一夜だから小さな失敗でも許されないとあって、真矢もかなりの緊張状態だった。
「社長、就任おめでとうございます」
「おめでとうございます」
自由な歓談が始まると、新社長にあいさつしようと招待客たちが群がっていく。
ロマンスグレーの紳士が新社長だ。引退した会長も一緒にいるのが真矢の目にとまった。
その横に、経営企画部長の岳。反対にいるスレンダーな美女が、岳の妹だとすぐわかる。
彼女は女性社員の目標とされる存在だ。女性役員が増えつつある現在、家柄ではなくその優秀さで同期の男性社員より一歩も二歩もリードしているとうわさされている。
「都々木社長とご家族がおそろいだ」
「美男美女ですこと」
招待客から声をかけられるたび、社長たちは笑顔で応じている。
セレブリティな人たちの集まりだからか、まるでドラマのワンシーンを見ているような気さえする。
パッと見た目は怖いくらいクールな印象の岳も、一家に向けるまなざしはとても温かい。
周りには人がどんどん集まっているが、社長たちを気遣いながら歩いている姿は頼もしくもある。
家族の仲よさそうな姿を見て、真矢はうらやましくなった。
(いいな、家族って)
自分にはないものだから、余計にまぶしく目に映るのかもしれない。
もうすぐ東京から離れなくてはいけないと思うと、亡くなった父母が恋しかった。
穏やかに時間が流れ、パーティーは大成功のうちに終わった。