虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます


「学生時代にラグビーで鍛えているから、これくらい楽勝だ。君こそ、大丈夫?」
「仲居は体力勝負ですから」

真矢が腕をポンとたたきながら答えると、おかしかったのか岳が少し微笑んだ。

「次々に新しい発見があって、見ていて飽きない町だ」
「お気に召してよかったです」

ふと、会話が途絶えた。かすかに藤の香りをふくんだようなさわやかな風が頬をなでる。
真矢が話題の糸口を探していたら、岳がポツリとつぶやいた。

「どうして、ここにいる?」
「え?」

「一年前、君は明都ホテルに勤めていた」

どうやら岳は気がついていたのに、覚えていないふりをしていたようだ。
過去の話をされて、真矢の頭の中は真っ白になった。

「は、はい」

岳はかつての勤め先の御曹司だ。
それなのに知らないふりをして不快にさせてしまったかと、真矢は慎重になる。

「すみません。都々木部長だとわかっていたのですが、初対面のように振る舞ってしまいました」

「いや、助かったよ。チョッと事情があってね」

真矢は岳がメガネをかけていたからおかしいと思っていたが、やはり明都ホテルグループの御曹司だとは知られたくなかったようだ。




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