虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます


「どうして対鶴楼で働いている?」

それだけは触れられたくなかったから、真矢は口ごもってしまった。

「えっと、あの……」

「君は鶴田家、つまり対鶴楼とはどういう関係?」

真矢の戸惑いが伝わったのか、岳は具体的な答えを求めてきた。

「支配人の親戚です」

「あの夜、君は泣いていた。ここは泣くほど嫌な場所じゃなかったのか」

岳は泣いていたことを覚えていた。
それはうれしくもあり、恥ずかしくもある記憶だ。真矢は対鶴楼での自分の立ち位置や、雑務に追われていることを知られたくなかった。

「あの夜は、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
「いや、それはいいんだ」

「あの、都々木部長がどうしてこの町へいらしたのですか?」

真矢は話をそらせたくて岳に尋ねてみた。

「色々と雑事があってね」

他人事のようにあっさりとした言い方だが、単なる用事とは思えない。

「町の観光にいらっしゃったのではない気がしていました。もしかしたら、対鶴楼にご用があったのでしょうか?」

真矢は気になっていたことを口にした。明都ホテルという大きな存在が、対鶴楼になにか仕掛けてくる気がしてならないのだ。

「そうかもしれないね」

その返事で、思った以上にやっかいな案件だとわかった。
これ以上は真矢が踏み込んでいい話ではない。どちらにしても、対鶴楼の今後に大きく関わりそうだ。





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