虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます


「真矢、元気にしてた?」
「たまには東京へ遊びに来てよ」

一年以上も会えなかったのに、同期たちは真矢のことを気遣ってくれる。
祖父が亡くなってすぐに退職したから、心配してくれていたのだ。

「産休をとる人がいるの。ピンチヒッターで来てもらえないかなあ」
「そろそろ復職してくれたら、ものすごく助かるんだけど」

かつての仕事ぶりを認められての誘いは嬉しいが、真矢は素直にうなずけない。
ホテルにいたころは仕事で認められるのがうれしかったのに、今はそれほどでもない。

(あの頃は、自分には何もないと思っていたから)

真矢は中学生の頃から周囲の人の反応ばかりを気にしてきた。
弱い自分を隠すために、誰にも本心を悟られないようにしてきた。
知識を得るよう努力して大学に進み、就職してからは「仕事が生きがい」という鎧を身に着けてきた。

そうやって、無意識のうちに自分を守ってきたのかもしれない。

(頼りになるのは自分だけ)

そう考えていた真矢には、夢とか希望が描けなかったのだ。
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