虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「あら。帰っていたのね」
「女将さん、お休みありがとうございました。これ、よろしかったらどうぞ」
東京の土産を渡すと、どこかよそよそしい。
「あなたに頼みがあったの。明日、お客様が見えるから接待をお願いね」
「わかりました。何時ごろでしょう」
「午後二時くらいかしら。第一応接室へお通ししてね」
わざわざ指示するくらいだから、よほど大切なお客様なのだろう。
真矢は頭の中で、茶器を選び茶菓子を何にするか考えた。
「お茶菓子は何がよろしいですか?」
「和文字でいいでしょ。小さい方でね」
「準備しておきます」
黙って聞いていた叔父が、会話の途中で口を挟んできた。
「お前、真矢に話しておいた方がいいんじゃないか」
「明日わかるから、今はいいでしょ」
叔母の目つきが厳しくなった。叔父夫婦の会話を聞いてはいけないと思い、真矢はその場から離れた。
(いったい何の話だったんだろう)
気にはなるが、叔母との接触を避けたかった。
なにしろ真矢は明都ホテルに勤めていたし、岳の観光案内もしていたのだ。
明都ホテルグループの御曹司だと知っていたのかと責められるかもしれない。
もやもやを抱えたまま、真矢はスタッフが集まる休憩室に土産の菓子を持って入った。