虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
このまま高杉社長に真矢が奪われるなんて、黙っていられない。
「それなら、俺が相手ならどうだい?」
真矢を犠牲にしてまで対鶴楼を守ろうとする叔父夫婦が許せなかった。
「俺と結婚するしかないな」
いきなり申し込んだからか、真矢は言葉を失ったように口をパクパクさせている。
「君を守るためだ。考えてくれないか」
ビジネスパートナーとして最高の相手だ。これは仕事のためだと思わせながらも、真矢を守りたいという気持ちを込める。
「とりあえず、婚約しよう」
明都ホテルグループの御曹司と結婚するといえば、鶴田家では無理に高杉社長と縁談を進められないだろう。
それに真矢と結婚するから明都ホテルグループが対鶴楼を支援すると言えば、手のひらを返してくるのは目に見えている。
岳が冗談を言っているとでも思っているのか、真矢は焦点の合わない目をしている。
この申し出を受けてくれるかどうかは賭けのようなものだと思っていたが、立ち上がった真矢がぐらりと傾いた。
「真矢!」
急いで受け止めると、体がとても熱く感じられた。
「真矢」
「だいじょうぶ……」
呼びかけると、かすかに答える。急いで抱えて、岳の寝室に寝かせた。
体調の変化に気がつかなかったのが悔やまれた
石段を軽々と登りきるくらいだし、いつも元気そうにしていたから油断した。
往診を頼んだ主治医が来るまで、冷たくしたタオルを額にあてるくらいしか岳にはできない。
そのわずかな時間でも、苦しそうな真矢を見ているのはつらかった。
診断では疲れがたまっているとのことだった。脱水症状もあるが入院の必要はなく、安静が必要だと言われた。
「今はゆっくり眠らせてあげてください」
岳が体に触れるわけにはいかないから、医師に同行していた看護師に真矢のことを頼んだ。
汗を拭いて、荷物の中から部屋着のようなものを出して着替えさせてくれた。
点滴を始めたら補液の効果が出たのか、呼吸も安定してきた。
よく眠れるような薬も入っているのか、真矢は穏やかな表情で目を閉じている。