虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます


岳も真矢に精神的な負担をかけていたひとりだ。
対鶴楼を買収しようとしているのが明都ホテルグループだと公になれば、かつて勤めていたというだけで真矢は色眼鏡で見られたかもしれない。
真矢が鶴田家でどんな扱いだったか弟から聞いていたのに、もっと気を配るべきだった。
まさか身内から政略的な縁談を仕向けられるとは、真矢も思っていなっただろう。
それを断ってすぐに町を出てくるなんて、かなりの勇気が必要だったはずだ。

(真矢を守れるのは俺だけだ)

頼ってくれたなら、守り切る。それが岳の矜持だ。
岳の結婚相手になれば、高杉や鶴田家からの無理な要求も突っぱねられる。

(すべては真矢が元気になってからだ)

その夜は、なるべく真矢のそばにいた。
額を冷やしたりストローで水分を取らせたりするのは、岳には離れないことばかりだったが、真矢のためなら苦にならない。

目が覚めた時に、岳が結婚を申し込んだことを覚えているだろうか。
問題は山積しているが、大切なのは真矢の信頼を得ることだ。

真矢がよく眠れているか見守っていたら、時計の針は夜明けが近い時間をさしている。

(さて、これからどうするか……)

対鶴楼買収計画を、明都ホテルグループが支援するという方向に大きく転換する。
父からは「すべて任せる」と最初に言われているのだ。役員会から反対意見は出るかもしれないが、勝算はある。

真矢のアイデアが発端だが、旅館の経営やあの町の観光だけでなく、おそらく市や県を巻き込む事業になるから政界にも影響が出るだろう。
岳は地域を巻き込んで、この計画を推進していこうとしている。思った以上にやりがいのある、大プロジェクトになりそうだ。



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