虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
リビングのソファーで数時間だけ仮眠をとってから、すぐに岳は行動に移した。
真矢が眠っている間に、まず彼女の立場をはっきりさせなくてはならない。
まず、対鶴楼への連絡だ。
明都ホテルグループとして援助を申し入れると、支配人はすぐに受け入れた。
どうやら女将の暴走に辟易していたようで、こちらの案に乗ってきた。
後日正式に契約書を交わすことにしたが、その前に真矢の立場をはっきりさせたい。
対鶴楼の社員として明都ホテルグループに出向させるか、退職扱いにするのか。どちらにするかは対鶴楼の支配人に決断させる。
岳はどんな形になっても真矢を明都ホテルに受け入れるつもりだから、あとから文句が出ないようにしておくためだ。
予想ではあっさり真矢を手放すかと思っていたが、支配人は出向を選んだ。やはり姪だから、手放せないのだろうか。
「それから、鶴田真矢さんと婚約しました。今後ともよろしく」
最後に爆弾を投げつけておいた。
眠ったままの真矢をひとり残して出かけられないから、Webシステムで父にも事情を説明した。
今日は仕事を休むが、近日中に新たな企画を提出することで支援に切り替えることを了承してもらう。
真矢が回復したら、森川たちと新しい計画を作り上げて提示すると話した。
【面白いが、集客力があるかどうかが問題だな】
「あの地方を巻き込んでの総合的な開発になりますから、マスコミやSNSの力も利用しましょう。華怜の力も借ります」
地方の活性化がらみの話だから、真矢たちが取り組んでいた地域観光づくりの法人化が成立すれば観光庁を巻き込める。
あとはどれだけ世間の注目を集められるかだ。
【おまけに、婚約するというのか。そのお嬢さんと】
「はい。亡くなった鶴田家の長男の娘さんです」
【会長は名前を出していなかったが、お前の花嫁候補はその人だったのか】
「わかりません。それに、あちらの家にはなにも伝わっていないようです」
買収を持ち掛けた時に、鶴田家から縁談という言葉はひとつも出てこなかった。
おそらく祖父の申し出は伝わっていない話だと確信している。
【それなら、知らぬが花というものだ】
父の言葉は妙に重く聞こえた。