虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます


「いつの間に……そんなことまで」

朝からの数時間で岳が話を進めて勝手に決めてしまったから、戸惑っているようだ。

岳はそんな真矢にノートパソコンを開いて、作り上げたばかりの書類を見せる。

「君との契約書を用意した」

夕べ真矢は、自分の結婚より対鶴楼の経営を一番に考えていると言い切っていた。
親を失ってから対鶴楼で育ってきた彼女にとって、仕事だけが生きる支えだったことは想像できる。
現に明都ホテルや対鶴楼での仕事ぶりは、誰もが認めるところだろう。
今は「仕事が一番」という真矢の気持ちを尊重したかった。岳は真矢に、思いっきり仕事ができる環境を整えてやりたかった。

だから結婚も仕事と同じように、契約という形にしてしまうのが一番だと考えた。
明都ホテルグループの経営企画部長、都々木家の長男でグループの後継者、それが岳だ。
いずれ都々木岳の妻になる契約を、真矢と交わすのだ。

「君が俺の花嫁になる契約書だ」

明都ホテルグループが対鶴楼を支援することと、本日をもって鶴田真矢は都々木岳と婚約し、いずれ結婚することを明記した。
お互い仕事で忙しくなるから、当分は生活面では干渉しないことも追記している。

「家のことは今まで通り家政婦がする。今のところ、妻や婚約者としての役割は必要ない」

「え?」

必要ないという言葉に、真矢が強く反応した。自分が役に立たないと誤解したかもしれない。



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