神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
どっか行くなら、事前にそう言ってから行けよ。

何も言わずにいなくなりやがるから。

「…おい、ベリクリーデ。いい加減出てこいって」

「…しょぼーん…」

…ほら。ベリクリーデがモグラみたいに、ベッドの下から出てこない。

どうしてくれるんだよ。

このままじゃ俺、今日、ベッドの上で寝れないじゃん。

…はぁ。

「ったく…。あの傍迷惑な天使…」

イライラしながら、俺は手元の紙切れを握り締めた。

おっと。さっきキュレムが持ってきてくれたお知らせの紙、握り締めてしまった。

八つ当たりでしわくちゃにしてしまった。申し訳ない。

一体何の知らせかと思いきや、それは現在戦争中の、アーリヤット皇国とキルディリア魔王国の情勢について。

まだ世間一般には知らされていない最新の進捗状況を、極秘に調べてまとめ上げたものだった。

お知らせと言うか…報告書だな。実質。

と言っても、それほど目ぼしい情報はなかった。

報告書にざっと目を通してみたところ。

今のところ、戦争に発展も進展もない。

…それに、和平交渉が進んでいる気配もないそうだ。

アーリヤット皇国内では、反戦主義運動が少しずつ高まっているようだが。

攻め込んでいる側のキルディリア魔王国が戦争に乗り気なんじゃ、意味がない。

「…駄目だな…」

世の中がぐちゃぐちゃ、しっちゃかめっちゃかだよ。

少しは大人しくしてりゃ良いものを…。

「キルディリアの女王様も、一体何考えてんだか…」

と、呟いたその時。

首を引っ込めていたベリクリーデが、いきなりズボッ、とベッドの下から顔を出した。

うわっ、びっくりした。

いきなり動くなよ。

「何だ…どうした?」

「…」

モグラやってたんじゃなかったのかよ。もう飽きたか?

ってか、そろそろ疲れたんじゃね。ずっとベッドの下で腹這いになってるから。

…しかし、ようやく出てきたベリクリーデは、何処か様子がおかしかった。

「…きるでぃりあ…」

と、一回舌足らずに呟いて。

「…キルディリア…」

次は、確かな口調で呟いた。

な…何だ?どうした?

「…あの国がどうかしたかよ?」

「キルディリア…。…キルディリア、魔王国…」

「…??」

ベリクリーデは、もぞもぞとベッドの下から出てきた。

お…。モグラ、やめたのか…。

出てきたベリクリーデは、ちょっと埃っぽくなっていた。

頭のてっぺんに、小さな埃の塊がくっついてるぞ。

「ベリクリーデ…。お前、ちょっと着替え…」

「…キルディリア魔王国…」

「…どうしたんだ?さっきから」

ベリクリーデは、こちらを見ていなかった。

何もないはずの壁の方を、じっと見つめていた。

…一体その先に、何が見えていたのか。

俺には分からない。

「ベリクリーデ…何か感じ取っ、」

「ジュリス、私、キルディリアに行きたい」

「…は?」

突然の要望に、俺は目が点になってしまった。
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