神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
しかし、ここで問題が発生した。

そう。俺は今、両手が塞がっているのである。

片方で自分の、もう片方の手でベリーシュのアイスティーを持っているから。

さすがに、アイスティーの紙コップを持ったままでは殴れない。

…ので。

俺は怒りのままに、氷がたっぷりと入ったアイスティーを、クソガキ共の脳天からぶち撒けてやった。

「ギャァッ!!」

叫ぶガキ。

何が「ギャア」だ。お前らのやったことの方が遥かに悪質だろうが。

ベリーシュに止められなかったら、もう片方の手に持っていたアイスティーもぶち撒けていたと思う。

しかし。

「ジュリス、暴力は駄目だよ…!」

「…くっ…」

俺と違って、ちゃんと理性が残っていたらしいベリーシュ。

お前、良いんだぞ。キレても。

傷つけられた当人のベリーシュが怒ってないのに、俺がブチギレてるなんておかしな話だ。

ベリーシュに止められて、結局、二杯目は勘弁してやった。

「とっとと失せろ、このクソガキ共」

我ながら、非常に大人げない態度と台詞だったが。

これでも、二杯目をぶち撒けなかっただけ優しさを見せた方だ。

俺の気が変わる前に、さっさと俺の前から消えろ。

クソガキ共は突然の攻撃に、目を白黒させながら。

それでも、俺の目が憤怒に染まっていることは、理解出来たのだろう。

頭からアイスティーの雫をしたたらせ、蜘蛛の子を散らしたように、一目散に逃げていった。

…賢明な判断だ。

これに懲りたら、二度とこんな馬鹿なことはするなよ。

…って、あんなクソガキ共のことはどうでも良いんだ。

「…ベリーシュ!手、大丈夫か?」

「え?あぁ…うん、大丈夫」

大丈夫なワケないだろ。

「ちょっと見せてみろ」

「あ」

俺はベリーシュの手を取って、傷を確認した。

石が直撃した手の甲に、血が滲んでいる。

幸い、骨に異常はなさそうだが…。

「…ちょっと待ってくれ。すぐ手当するから」

「大丈夫だよ、ジュリス。このくらい…」

「良いから。大人しくしてろ」

こんな時の為に、ミニ救急セットを用意しておいて本当に良かった。

危機管理の希薄なベリクリーデは、すぐにうろちょろしたり、危険に身を突っ込んだりするからな。

ベリクリーデがいつ怪我をしても手当出来るように、普段から、救急セットを持ち歩くようにしているのだ。

俺は救急セットの中から、脱脂綿と消毒液を取り出し。

脱脂綿に消毒液を含ませて、傷口を優しく、ぽんぽんと軽く叩くようにして消毒した。

「沁みるか?痛いか?」

「大丈夫。…だけど、ジュリスは物持ちが良いね」

「まぁ…。普段から、ベリクリーデの破天荒に付き合わされてるからな…」

「そういえばそうだね」

持ってて良かった。救急セット。

消毒が終わると、傷口に清潔なガーゼを当て、包帯でぐるぐると巻いた。

…これで良し、と。
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