神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
このことを誰よりも喜んでいたのは、僕ではなく。

「おかえりー、ツキナ。待ってたよ」

『八千歳』である。

彼女がいない間、『八千歳』は畑仕事をしていても、やる気が出ないようで。

「あー、ツキナがいないとつまんないなー」とか。

「ツキナそっくりのカカシでも作ろうか?」とか、色々言ってた。

良かったね。帰ってきて。

「お前達ーっ!ちゃんと畑の世話はしてたんだろうなっ?」

「勿論だよ。ちゃんと土起こしもしておいたよ」

「よーし!」

冬休みの間は授業がなくて、暇だったからね。

畑仕事に割く時間を多く取ることが出来た。

まぁ、その間にキルディリア魔王国が攻めてきたりもしたけど。

些事なことだよ。

「うんうん、良い感じ。来年も美味しい野菜が穫れそうだなー」

ツキナ・クロストレイは、畑の土を手に取って指で触りながら、満足そうに言った。

彼女は本格的に、魔導師ではなく農家を目指すべきだと思う。

ろくに魔法が使えない僕が言うのもなんだけど。

「よしっ!よくやった君達!褒めてつかわそう」

「ははー、有り難き幸せ」

何で武士口調なの?『八千歳』。

「褒美として、このお土産を授けよう」

と言って。

ツキナは、手に持っていた紙袋を僕と『八千歳』に差し出した。

…何だろう?これ。

「…お土産?何?」

「お饅頭。私の実家の近くにある和菓子屋さんで買ったの」

へぇ。

「だってすぐり君も令月君も、和菓子の方が好きって言ってたから」

うん。

学院長が好きなのは、生クリームやチョコレートがたっぷりの洋菓子だけど。

僕と『八千歳』は、和菓子の方が好きである。

僕は特に桜餅が、『八千歳』はいちご大福が好きって言ってたな。

「あげる!」

「ありがとー、ツキナ」

『八千歳』は、大変嬉しそうだった。

「早速みんなで食べよっか」

「それじゃ、僕抹茶をたててくる」

「よろしくー」

お饅頭に合うのは、やっぱり抹茶だよね。

学院長は好きじゃなさそうだけど、僕と『八千歳』は好き。

抹茶と、お饅頭…。

キルディリア魔王国軍との戦いで負傷し、病み上がりの身体で、土起こしを頑張った甲斐があったね。
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