神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
しかし、多分そうじゃないと思うんだよ。

そんな簡単な問題では…。

「駄目か…。よし、それならバナナジュース作ってやろうか?」

「…ばななーん…」

何だその返事。

「要らないのか?…じゃあ別のもの…。…あ、そうだ。ツナコーン軍艦は?作ってやろうか?」

「…つななーん…」

「…駄目か…」

…なぁ。

これ、コントか何か?

ツッコミ不在のコントだよ。

どうやらベリクリーデちゃん、相当元気がないようだな。

普段元気いっぱいなだけに、こうして落ち込んでると、ジュリスじゃなくても心配になるな。

「えぇっと…じゃあ…食べ物はやめて、他のもの…」

何とか、ベリクリーデちゃんに元気を出してもらおうと。

ジュリスはさながら、ベリクリーデちゃんのお母さんみたいに頑張っていた。

「でんでん太鼓作ってやろうか?」

「…でんでーん…」

…赤ちゃんかな?

「要らないか?じゃあメリーは?」

「…めりりーん…」

…やっぱり赤ちゃんかな?

俺とルイーシュは、それらのやり取りを見ながら小声で、

「なんか、努力の方向性を間違えてね?」

「ベリクリーデさんなら正解なのでは?」

…確かに。

完全に、赤ちゃんをあやそうとしてるパパなんだよなぁ…。

ジュリスは良いパパになりそうだよ。

「…これでも駄目なのか…」

「…しょぼーん…」

いよいよ、万策尽きたらしいジュリス。

…そして俺達も、そろそろ傍観に徹していられなくなった頃だ。

「…なぁ、さっきから何やってんの?」

こういう時、あまり口を挟まない方が良いのは百も承知だが。

俺も鬼じゃないからな。

ベリクリーデちゃんが落ち込んでるなら、なんか力になってやるよ。

これでもし「つわりが酷くて…」とか言われたら。

俺はジュリスの頭にコロッケ丼をぶち撒けてやる。

…え?食べ物が勿体ない?

確かに。じゃあやめるわ。

しかし、その心配は必要なかった。

「ん?あぁ…キュレムとルイーシュか…」

俺が声をかけてようやく、ここに俺達がいることに気づいたらしい。

ジュリスは、溜め息混じりにこちらを向いた。

お前らいたのか、ってか?

いたわ。悪かったな影が薄くて。

そうだ俺は影が薄いさ。あまりに影が薄くて、小学生の時の遠足で、クラスメイトに置いていかれたことがある。

畜生。

「ベリクリーデさん、何かあったんです?さっきから全然食べてないみたいですけど」

と、ルイーシュが聞くと。

「あぁ…。今、ちょっとベリクリーデがナーバスになっててな…」

「体調、崩したのか?」

「病気ですか」

「いや、病気じゃなくて…メンタルの問題だ」

ほう。メンタル。

じゃあつわりじゃないんだな。良し。
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