神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
この人さっき、『終日組』の暗殺者は全員、ゲノムを採取されてるって言ってましたよね。

ってことは…令月さんと、すぐりさんの遺伝子情報も、『アメノミコト』が所有している訳ですか。

…令月さんと、すぐりさんのクローンも…作ろうと思えば、作れるってことだ。

令月さんとすぐりさん、それぞれと同じ顔をした暗殺者が、わらわらと襲ってくるところを想像してみた。

…成程、世紀末ですね。

その技術を確立させたら、最悪、『アメノミコト』クローン暗殺者軍団が出来ますね。

…怖っ。

「…そういうことは、やめておいた方が良いと思いますけど」

正気じゃないですよ。完全に。

あの鬼頭夜陰は、作り出したクローン軍団が、いつか自分に牙を剥くかもしれない、という可能性を考えていないのだろうか。

あなたが作り出したからって、そのクローン達が、大人しく自分の言うことを聞き続けてくれるとは限らない。

忠実なコマだと思っていたら、ある日いきなり反逆されたら。

…本当に、未来系SF映画の世界ですね。

「もちろん、クローンを作り出すリスクは、鬼頭様も分かっていらっしゃいます」

「分かってたら、あなたを作り出したりしないでしょう」

「ならば、僕に消えろと?」

「…」

『玉響』さんは、微笑みを浮かべてそう聞いた。

「もう一度僕を殺しますか?お前は大人しく、墓の下で死んでいるべきだ、と?」

「…それが自然の摂理というものでは?」

…なんて、思いっきり自然の摂理に反してる僕が言うのもなんですが。

「僕は死にたくありません。オリジナルの僕がどう思っているかは分かりません。でも、少なくとも僕は…今ここにいる僕は、死にたくない。生きていたんです」

「…」

…それは。

「確かに、僕はクローンです。この世に存在してはいけない人間なんでしょう。だけど、それは僕の責任ではない。僕はただ、この世に生まれてしまった。それだけです」

「…」

「そんな僕を殺しますか?何の罪もなく生まれた罪の子である僕を?」

…やめてくださいよ。

そういう言葉は…僕に効くんです。

鬼頭夜陰が何故、クローン一号を『玉響』さんの遺伝子で作り出したのか、その理由が分かった。

このように言えば、僕を…そして令月さん達も、心を揺り動かされると確信していたから。

その通りですよ。悔しいことにね。

「…もう、あなたの話は結構です」

あなたの生い立ちは、嫌と言うほど聞きました。

これ以上聞きたくない。

「僕の読心魔法を利用したいんでしょう。それなら好きにどうぞ」

「その前に、もう一つだけ聞いてください」

もう結構だって言ってるじゃないですか。

「鬼頭様が何故、クローン作成に乗り出したのか。何故、読心魔法使いであるあなたを『アメノミコト』に連れてきたのか…」

「…」

「そして、何故今になって、『八千代』と『八千歳』を呼び戻したのか…。その理由を説明させてください」

「…彼らが裏切り者だから、じゃないんですか?」

裏切り者は許さないって、散々そう言ってたじゃないですか。

「もちろん、その理由もあります」

あるんだ。

「ですが、鬼頭様は純粋に、戦力としてあの二人を使いたかったのです」

「なんでですか?戦力なら、『アメノミコト』にいくらでも…」

「…それが、そうも行かなくなっているんです」

…え。

「ナジュさん。あなたは、『八岐の大蛇』を知っていますか?」

『八岐の大蛇』?
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