神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
洞穴の中は暗くて、じめじめしていて、湿気が立ち込めて気持ちが悪かった。

おまけに天井が低くて、腰を屈めて進まなければならない。

うぅ…。…キツい体勢。

「ここ、昔は本当に防空壕だったんだね」

歩きながら、マシュリさんがそう言った。

えっ?

「軍服の切れ端みたいなものが落ちてるし…。…それに、ほら」

「ひっ…」

マシュリさんが地面から拾ったのは、錆びた薬莢のようなものだった。

嘘でしょ。ここ、本当に…。

「じ…じゃあ、探したら、ほ、骨とか…」

「あるかもしれないね」

「…!!」

…聞くんじゃなかった。

切実に、聞くんじゃなかった。

後悔先に立たず。

僕は、この防空壕の中で眠っている人の為に、心の中で必死に謝った。

ごめんなさい。荒らすつもりはなかったんです。眠りを妨げる気も。

どうしても、どうしてもナジュ君達を助ける為に、この場所を通る必要があるんです。許してください。

ごめんなさいごめんなさい…と、心の中で謝罪を繰り返す。

それから、同時に。

許さない、化けて出てやる、とばかりに…その…あろうモノが出てこないかと。

僕はしきりに、周囲をきょろきょろしてしまった。

うぅ。やっぱり別の隠し通路を使うべきだったんじゃ…?

それなのに、イレースさんとマシュリさんは、全然気にしていなくて。

「ちっ、歩きにくいですね」

「元々あった防空壕を、無理矢理掘り進めて道にしたみたいだね…。凄く曲がりくねってるし、道もたくさんある」

二人の度胸が羨ましいよ。僕は。

一人で怖がってる僕が馬鹿みたい…。

「こっちに来て。人の匂いを辿っていく」

マシュリさんが先頭に立って、僕達を先導してくれた。

有り難い…。

僕一人だったら、あっという間にこの防空壕の中で迷子になってしまっていただろう。

そもそも、一人だったら怖くて、防空壕なんて入れなかったに違いない。

びくびく。こわごわ。

でもナジュ君は、もっと頑張ってるはずだから。

「ナジュ君のため、ナジュ君のため…」

再度、自分にそう言い聞かせて進む。

暗がりの中を、そのままどれほど長く歩いただろう。

「…着いたみたいだよ」

やがて、広い場所に辿り着いた。
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