妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
「マネリア嬢、どうかもう私達には関わらないでください」
「……え?」
「あなたが私のことを曲がりなりにも愛しているというなら、そっとしておいていただきたい。考える時間は、これからいくらでもあります。何年先になるかはわかりませんが、出て来た時に更生していることを、せめて願っていますよ」

 レフティスはそう言い残して、地下牢から出て行った。
 それを見届けたから、アドルグはマネリアの方を改めて見る。意気消沈した彼女は、項垂れて動かない。その心は、完全に折れたようだ。

「……無論、ヴェルード公爵家もあなたの更生を願っている。寛大な我が弟と妹達に感謝するのだな」

 アドルグは、自分の言葉がマネリアに届いていないということを理解した。
 既に彼女の中にあった希望というものは、打ち砕かれている。そこから立ち直るということには、難しいことであるようだ。
 ただアドルグにとっては、その方が都合が良い。彼の優先するべきことは、妹の安全だ。マネリア嬢が気力を失ったというなら、彼の望みは叶ったといえる。
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