妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
 私の失言に、イフェネアお姉様は苦笑いを浮かべていた。
 やはり、あの笑顔はあまり良い笑顔という訳でもないのかもしれない。無理をして笑っているということなのだろうか。だとしたら、少々悲しいものである。

「でもあの笑顔は、親しい人の前でしか見せないものなのよ? 舞踏会とかそういった場では、なんとか表情は作れているの。でもまあ、それは心からの笑顔ではないけれど……」
「心からの笑顔、ですか……」
「ええ、でもウェリダンは感情がないという訳ではないから、きっとその出力の仕方がわからないのでしょうね……今は変な癖がついているというか」
「なるほど……」

 ウェリダンお兄様のことが少しだけわかって、私は色々と考えることになった。
 感情を表に出すことができないというのは、私には経験がないことだ。楽しい時は笑っていたし、悲しい時は泣いていた。それはもしかしたら、幸せなことだったのかもしれない。



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