バリキャリ経理課長と元カレ画家、今さら結婚できますか?

第十話 「個展開催に向けて」

個展開催に向けての準備が始まった。

「えっと、開催に必要な費用は——ギャラリー会場費、宣伝費、パンフレットやキャプションの作成……それから、絵の制作にかかった費用も原価として計算する必要があるわね。他に何かある?」

理沙がノートに書き込みながら問いかけると、拓真が腕を組んで考える。

「芳名帳とか。作品リストも用意した方がいいかも」

「なるほど。それも予算に入れておきましょう。あと、利益目標 も設定するわよ」

「えっ、利益目標?」

拓真が思わず顔を上げる。

「ギャラリーの選定や価格設定にも必要になるから。希望でもいいの。目標がなければ、今後の戦略も立てられないわ」

「……でも、どれくらい売れるかも分からないのに、目標なんて立てられるのか?」

「立てられるわよ。希望でも、見込みでもいいから、基準がなければ、成功したかの判断もできないでしょう?」

きっぱりと言い切る理沙に、拓真は苦笑する。

「……さすが経理部長様だな」

「何よ、その言い方」

「いや、理沙が経理のプロすぎて、僕の個展なのに会社のプロジェクトみたいになってきたなって」

「大事なのは、作品を多くの人に見てもらうこと。でも、やるからには利益も出さないと」

理沙がさらさらとノートに書き込んでいくのを見ながら、拓真は苦笑しつつもどこか安心した表情を見せた。

二人の個展開催の準備は、着々と進んでいった。
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