バリキャリ経理課長と元カレ画家、今さら結婚できますか?
第十一話 「個展」
——今日は、何とか間に合いそう。
個展が始まって3日目の木曜日。
理沙は仕事を終えると、急ぎ足でデパートへと向かった。
エントランスに着くと、目に飛び込んできたのは 大胆なタッチで描かれたバラの絵。
拓真らしい、力強さと繊細さが同居するその作品が、個展のポスターに使われていた。
——花の声、風の色 浅井拓真 油絵展——
エレベーターでアートギャラリーのある階へ。
閉店時間が近づいていたが、数人の客が熱心に絵を鑑賞していた。
拓真は、その一人に絵の説明をしている。
壁には 「売約済み」 のシールが貼られた作品もいくつかある。
——少し、ホッとした。
拓真が客と話し終えるのを待ち、理沙は静かに声をかけた。
「どう、調子は?」
拓真は少し肩をすくめ、苦笑する。
「お客さんは結構来てくれてるし、関心を持って見てくれる人も多い。でも……売れ行きは少し厳しいかもな」
「そうなのね。でも、週末が勝負じゃない?」
「だな。ここから、どうなるか……」
拓真は天井を仰ぎ、小さく息をついた。
◇◇
デパートが閉店し、二人は通用口から外へ出た。
夜風が心地いい。
「どこかで食事しよう」
「そうだな。腹減った」
自然な流れで、二人は個室付きの居酒屋に入った。
カウンターではなく個室を選んだのは、ゆっくり話ができるからだ。
ビールが運ばれ、料理が並ぶ。
「忙しそうだな」
拓真が、理沙のグラスにビールを注ぎながら言う。
「ええ。やっと来れたわ」
グラスを軽く合わせ、二人はビールを一口。
「僕が心配することでもないけど……ちゃんと食べてる?」
「……情けないけど、コンビニのサラダと総菜ばっかりよ」
素直に告白すると、拓真は吹き出した。
「経理部長様が、それじゃ寂しいな」
「そんなものよ」
「たまにはちゃんと料理しろよ」
「言うわね。そっちは?」
「まあ……料理はしてるよ。簡単なものばっかりだけど」
二人とも、苦笑いしながら箸を動かす。
◇◇
食事が終わり、会計のタイミングになると、理沙がさっと財布を取り出した。
「ここは私が出すわ」
拓真は一瞬止めようとしたが、その手を引っ込めた。
以前の拓真なら、間違いなく 「いや、僕が払う」 と言っていたはずだ。
でも——。
「……ありがとう」
これまでの関係なら、こんなふうに素直になれなかった。
でも今は、理沙の好意をそのまま受け取っている。
そんな拓真は、むしろ、誇らしさを感じているようにさえ見えた。
個展が始まって3日目の木曜日。
理沙は仕事を終えると、急ぎ足でデパートへと向かった。
エントランスに着くと、目に飛び込んできたのは 大胆なタッチで描かれたバラの絵。
拓真らしい、力強さと繊細さが同居するその作品が、個展のポスターに使われていた。
——花の声、風の色 浅井拓真 油絵展——
エレベーターでアートギャラリーのある階へ。
閉店時間が近づいていたが、数人の客が熱心に絵を鑑賞していた。
拓真は、その一人に絵の説明をしている。
壁には 「売約済み」 のシールが貼られた作品もいくつかある。
——少し、ホッとした。
拓真が客と話し終えるのを待ち、理沙は静かに声をかけた。
「どう、調子は?」
拓真は少し肩をすくめ、苦笑する。
「お客さんは結構来てくれてるし、関心を持って見てくれる人も多い。でも……売れ行きは少し厳しいかもな」
「そうなのね。でも、週末が勝負じゃない?」
「だな。ここから、どうなるか……」
拓真は天井を仰ぎ、小さく息をついた。
◇◇
デパートが閉店し、二人は通用口から外へ出た。
夜風が心地いい。
「どこかで食事しよう」
「そうだな。腹減った」
自然な流れで、二人は個室付きの居酒屋に入った。
カウンターではなく個室を選んだのは、ゆっくり話ができるからだ。
ビールが運ばれ、料理が並ぶ。
「忙しそうだな」
拓真が、理沙のグラスにビールを注ぎながら言う。
「ええ。やっと来れたわ」
グラスを軽く合わせ、二人はビールを一口。
「僕が心配することでもないけど……ちゃんと食べてる?」
「……情けないけど、コンビニのサラダと総菜ばっかりよ」
素直に告白すると、拓真は吹き出した。
「経理部長様が、それじゃ寂しいな」
「そんなものよ」
「たまにはちゃんと料理しろよ」
「言うわね。そっちは?」
「まあ……料理はしてるよ。簡単なものばっかりだけど」
二人とも、苦笑いしながら箸を動かす。
◇◇
食事が終わり、会計のタイミングになると、理沙がさっと財布を取り出した。
「ここは私が出すわ」
拓真は一瞬止めようとしたが、その手を引っ込めた。
以前の拓真なら、間違いなく 「いや、僕が払う」 と言っていたはずだ。
でも——。
「……ありがとう」
これまでの関係なら、こんなふうに素直になれなかった。
でも今は、理沙の好意をそのまま受け取っている。
そんな拓真は、むしろ、誇らしさを感じているようにさえ見えた。