バリキャリ経理課長と元カレ画家、今さら結婚できますか?

第七話「組織変更の内示」

「おめでとうございます、葉月部長!」

ワイングラスが軽く触れ合う音が響く。
理沙の戦略経理部長への就任が内定し、経理部の同僚たちがささやかな祝賀会を開いてくれた。

「部長なんて、もう完全に幹部候補ですね!」
「葉月さん! 目標にしてます!」

皆が祝福してくれる。
理沙も、微笑みながらグラスを傾ける。

——成功した。ちゃんと、ここまで来た。

けれど。

ふと、空になったワイングラスの底を見つめる。
周りの賑やかな声とは裏腹に、胸の奥にぽっかりと穴が開いたような気がした。

「私、何が欲しいんだろう」

ワインを飲みながら、静かに考える。

夜の帰り道、ふと拓真を思い出す
店を出ると、冷たい夜風が頬を撫でた。

遅い時間の帰り道は、もう慣れたもの。
けれど、今日はいつも以上に心が落ち着かない。

「……うまくやれてる、よね。私」

そう呟いてみても、答えは返ってこない。

——でも、私生活は? 心の支えは?

気づけば、歩きながらスマホを取り出していた。
連絡先を開く。

『浅井拓真』

2か月以上、連絡していない名前がそこにあった。
何も変わらないようで、でも、何かが変わった気がする。

指が画面をなぞる。
「今なら、彼と向き合える気がする」

そう思った瞬間、理沙は決意した。

拓真と、もう一度話そう。

正式に戦略経理部長に着任する前に。
それが、今の自分にとって必要なことだと、理沙ははっきりと感じていた。

< 7 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop