Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー

「乗れ。」

桂木はそれだけ言い、車の助手席のドアを開けた。

小夜は助手席に座り、桂木も運転席に乗り込むと、車の灰皿に煙草の火を擦りつけて捨てた。

車は走り出し、桂木のマンションへと向かっていく。

桂木は無言のまま、車の運転に集中していた。

小夜も話しかけず、ただ車窓を流れる景色を眺める。

青い空、そして見慣れた町並み。

もう当分見れられないと思っていた風景に、小夜はやっと自分が釈放された実感を得た。

これが娑婆の空気というものなのだろうか。

マンションの駐車場に入り車を止めた桂木は、突然小夜を抱きしめ、乱暴に唇を塞いだ。

「んっ・・・」

食べられてしまうような長い口づけの後・・・桂木が真っ直ぐな目で小夜を問いただした。

「どうして()ってもいないのに、自首なんてした?」

「・・・・・・。」

小夜は何も答えられなかった。

どうして自分が釈放されたのかも、警察では何も教えてもらえなかった。

まさか玉穂が自首してしまったのだろうか・・・?
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