Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー

そしてポケットから尖ったナイフを取り出し、小夜の目の前に突き出した。

小夜はその切っ先をただ黙ってみつめた。

「ほらほら。逃げないの?」

「もうやめて。これ以上罪を重ねないで!」

「私、本気よ。本気で小夜先輩を刺すわ。一人殺すのも二人殺すのも同じよ。」

「じゃあやっぱりあなたが広之を・・・」

「だからなに?広之さんが悪いのよ。広之さんが私を裏切ったから・・・」

「そう。全部広之が悪いの。だからもうこんなことやめよう?」

「ふん。強がっちゃって。・・・わかった。私が死ぬ。」

彼女はナイフの矛先を自分に向けた。

「駄目!死んだら駄目!私も死のうと思った。けど・・・自分より大切な存在が出来たから・・・あなたにだってきっと生きていて良かったって思える日が来るから!」

小夜はそう叫び、ナイフの刃を自分の両手で掴んだ。

刃先が手の平に食い込み、赤い血がぽたりと流れる。

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