Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
「いいなあ。私も早く結婚したいよ。」
桃色の振り袖を着た、隣に座るみのりが、そう嘆いた。
みのりには長く同棲している彼氏がいる。
みのりの彼氏である水野肇は弁護士を目指して何回も試験を受けているが、まだその成果は実らず浪人中だ。
おのずと生活費はみのりの給料で大半をまかなっており、水野はみのりのヒモと言っても過言ではなかった。
そんな生活が続けられるのは、みのりの実家が資産家で裕福だからだ。
みのりと水野が住むマンション費用はみのりの実家が立て替えている。
「早く肇君が弁護士になってくれないと困るんだよね。」
「水野さんと結婚の話は出ていないの?」
小夜の言葉にみのりは肩を竦めた。
「そりゃ、私はすぐにでもしたいけどさ。まずは肇君が弁護士試験に合格して稼げるようにならないと親が許してくれないよ。」
「そっか・・・。」
「特に母親なんか早く孫の顔がみたいってうるさくて。この前もお見合い写真何枚も持ってきてさ。でもちゃんと見たら、結構良さげな男もいたけど。」
「早く水野さんが試験に受かるといいね。」
「でもそんな簡単にはいかないみたい。あ、これ美味しい!」
テーブルの上には、普段は食べられないようなフランス料理のコースが並べられている。
小夜もトリュフソースのかかった牛フィレ肉のポアレを少しだけ口にした。
「本当だ。美味しい・・・」
「ご祝儀払ってるんだもん。しっかり食べなきゃね。」
みのりはそういいながら、グラスに入った赤ワインを口に含んだ。
しかし妊娠中で悪阻もある小夜は、アルコールなど口にする気にもならず、食事もほとんど残してしまった。
広之に用立てたローンを払い続けている小夜にとって、この結婚式に包む祝儀は経済的に痛かった。
けれど大学時代に仲良くしてくれた舞の晴れ姿を祝いたい、そんな気持ちでこの結婚式に出席したのだった。