Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
食べ物を口にした小夜は、すっかり死ぬ気が失せている自分に気づいた。
こんな自分をまだ見捨てないでいてくれた人がいる。
目の前に座る男を見ながら、小夜はこの偶然、または奇跡に思いを馳せていた。
「貴方の名前を聞いてもいいですか?」
小夜の言葉に男は少し間を置いたあと、右の口角を上げた。
「俺は桂木。桂木泰生だ。」
カツラギタイセイ・・・漢字はわからない。
けれどその名前は一生忘れない・・・小夜はそう思った。