Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー

男は穏やかな声で小夜に聞いた。

「身体はもう・・・大丈夫なのか?」

「はい・・・」

「仕事はどうした?」

「仕事は・・・辞めました。というか解雇になりました。」

「・・・・・・。」

「笑っちゃいますよね。でもこんな女の戯言(たわごと)でも話の種になるでしょ?」

小夜は精一杯に泣き笑いして見せた。

しかし桂木はくすりとも笑わずに言った。

「笑いたくない時に、無理に笑うな。」

そして小夜に自分のハンカチを手渡した。

涙を拭け、ということなのだろう。

男の優しさが身に染みた。

地獄に仏とはこういうことを言うのだろうか。

「ありがとうございます。話を聞いて頂けただけでも少し気持ちが楽になりました。」

「もう、二度とあんなことするなよ。」

厳しくそう命令口調で言う男に、小夜は深く頭を下げた。

「はい。・・・牛丼、ご馳走様でした。」

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