Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー

小夜は手始めに部屋の掃除を始めた。

散らかってはいるが、そんなに物は多くないので、あっという間に片付いた。

小夜は桂木が遅く帰ってきても軽くつまめるような食事を作っておこうと、キッチンに入った。

最小限の調理器具と調味料。

冷蔵庫の中にはアルコールの缶と、少量の食材。

でも食パンと卵とマヨネーズはある。

小夜は卵サンドを作って置こうと思った。

けれど野菜や肉類が全く買い置かれていない。

買い物に行きたいけれど、桂木には外に出るなときつく言い渡されている。

外に出られないことがこんなにも窮屈だなんて・・・

小夜は大きくため息をつく。

ふとリビングのチェストの上を見ると、いつか小夜の涙を拭くために貸してもらったハンカチが綺麗に洗濯をされて置かれてあった。

どうしてこんなところに・・・?

お前のことだけを考えて生きてきた・・・桂木の言葉が頭によみがえる。

もしかしてこのハンカチを見て、私を思い出していた・・・?

そんな想像に小夜の口元が緩んだ。

サンドイッチを作り終わり、冷蔵庫に入れておく。

小夜はそっと他の部屋も見て回った。

どの部屋も片付けられていて、あまり利用されている形跡はない。

そしてそのどこにも女の影は見当たらなかった。

そのことに小夜は心から安堵していた。

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