Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
「私はね・・・小学生のときまではすごく幸せだった。
父も母も仲が良くて、私の誕生日にはレストランを予約してくれて、3人でケーキを食べた。北海道へ旅行に行った時は楽しかったな。ラベンダー色のソフトクリームを食べて、時計台を見て、自分以外の誰もが幸せなんだって疑いもしなかった。」
「・・・・・・。」
「けど・・・私が中学へ入学してまもなく、父が同窓会で再会した女性と不倫したの。それを知った母も当てつけのようにマッチングアプリに登録して恋人を作った。そして砂の城が崩れるように、私の家庭は跡形もなく消えた。父と母は離婚してそれぞれ新しい家庭を作ったの。私は父に引き取られ、大学までは通わせてもらったけど・・・そこに私の居場所はなかった。だから大学に入学してすぐに家を出たの。そんな私のそばにいたのは広之だけだった。だから・・・どんなに非道いことされても従ってしまったの・・・。」