Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
桂木は小夜の話を聞き終えると起き上がり、ベッドサイドのテーブルに置かれたペットボトルの水を一口飲んだ。
「俺は・・・新潟の海沿いの町で県警の刑事部長だった親父に厳しく育てられた。だが・・・俺が中学生だった頃にお袋は親父の部下だった若い男と駆け落ちした。思春期だった俺はそれが原因で荒れた。喧嘩に明け暮れて、学校一のワルだなんて言われていた。当然、親父は俺に失望した。」
「・・・・・・。」
「そのとき、警察の児童課の担当者だった福田っていう刑事がいてさ。パンチパーマでヤクザみたいなツラしてる癖に、優しい眼をした男だった。お節介な性分なのか俺を見掛けると必ずラーメンを奢ってくれた。バレたらまずいから内緒にしとけよって笑いながら・・・。福田に出会わなければ俺は今頃、その町のチンピラにでもなってただろうな。」