Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
大学を卒業し、広之は大手広告代理店に就職し、小夜は小さな出版社の事務職員となった。
社会人になってからの広之は、華やかな世界に身を置き、今はもう小夜の全てに興味を失っていることは明らかだった。
たまに会っても、話題は会社の愚痴や芸能ゴシップのことばかりで、小夜の話や悩みなど聞いてくれようともしない。
外で食事をするときは、割り勘どころか、小夜が支払うことが当たり前になっている。
もう自分は出会った頃のようには想われていない。
それが分かっていても、小夜は広之と別れられなかった。
中学時代に両親は離婚し、親の愛に恵まれなかった小夜はいつもひとりぼっちで、自分を抱きしめ、包み込んでくれる存在を欲していた。
そして小夜を女として扱ってくれるのは、広之しかいなかった。
どんなに馬鹿にされても、蔑まれても、たまに会いに来てくれる。
そんな歪んだ愛でも、小夜は手放すことが出来なかった。