Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー

桂木が署に着くと、捜査一課内がざわめいていた。

自席に座った桂木は、真面目くさった顔で自分に向かって歩いてくる野間に声をかけた。

「おい。何事だ?」

「お前、なに悠長なことを言ってんだ?犯人(ホシ)が自首してきたんだよ。」

桂木の全身に激震が走った。

まさか・・・・・・

「誰が・・・?」

「決まってんだろ?下条小夜だよ。」

「なんで・・・」

思わず机に肘をつき、頭を抱えて、桂木はそう(うめ)いた。

「なんでって・・・もう逃げるのに疲れたんだろ?」

桂木の席に捜査一課長の塩野が近づいてきた。

塩野は桂木に厳しい声で言った。

「桂木。お前が取り調べしろ。お前は女子供にも容赦しないことで実績を上げてきた刑事(デカ)だもんな?今回もその手腕を発揮してくれ。いいな?」

「・・・・・・。」

桂木はそう言って自席に戻る塩野の背中を殴りつけたい衝動に駆られた。

きっと何かの間違いだ。

小夜が犯人なわけがない。

小夜がこの俺に嘘をつき続けていただなんて信じられない。

俺はどんなことがあっても小夜を信じる・・・桂木はそう自分に言い聞かせた。

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