true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
こまさん・・・えっ!
聞き覚えのある声と名前に振り向くと、スタッフと間違えていた男性が、小さく手を振っていた。
「恩師のこまさんこと、小巻さんですよ」
小巻さん・・・この人が勝川所長の後輩・・・

「あっ、あの・・・色々と勘違いしてまして、失礼しました。面接の件も、ありがとうございます」
「いいの、いいの。まさか弁護士が、喫茶店の留守番してるなんて、思わないよね」
「留守番・・・ですか?」
「私の家内がマスターでね。スタッフが少ない時、たまに留守番を頼まれるんだよ。時々、優聖君、あぁ、片桐所長にもお願いするんだ」
「それで、お二人はお店にいらしたんですか・・・」
「そういう事だよ。驚かせてごめんね。こまさん、例の件の書類は机に置いてますよ」
「ありがとう。早速、今から依頼人の会社に行くから」
「はい、お願いします」
「優聖君。私は、深澤さんの入社は賛成だからね。勝川さんの太鼓判付きだから、安心だよ」
こまさんは、「またね」と手を振りながら、部屋を出て行った。

「来たばかりで、色々、混乱したね。早速だけど、今日から仕事でも大丈夫かな?」
「は、はい。あの、片桐先生。面接は・・・」
「もう、先日までお会いした時間で十分ですよ。それと、ここでは、私も仕事仲間です。先生は付けないように。いいね?」
「はい。片桐・・・さん、宜しくお願いします」
「こちらこそ。法的なことは、加東君が私をサポートしてくれるから、事務的なことと、私の秘書として、スケジュール管理などをお願いしますね。では、早速ですが、入社手続きをしましょうか」

入社説明をする片桐さんの紳士ぶりに、思わず見惚れてしまっていた。

無造作ヘアの片桐さんは、色っぽさと紳士さが兼ね備わって、ミステリアスな大人の魅力で溢れていたけど・・・
スーツ姿で、髪を纏めた片桐さんは、品格の良さが体から溢れ、体に染みついた紳士的な振る舞いは、凜々しく惹きつけられる。
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