true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
「あなた・・・私の逆鱗に触れましたね」
初めて聞く、怒りを抑えるような低い声・・・
「常務は、浮気はしていないと裏は取れてます。きっと、離婚の話が出るのは、時間の問題でしょう」
夫人は写真を握りしめている。
「後はご夫婦の話として・・・彼女にこんなことを・・・私を敵に回した以上、覚悟してください。私は暴力は振るいません。法の下で、あなたに制裁を加えます」
常務夫人は、さっきまでの勢いは無くなり、震えるようにして、請求書を握り締めて、部屋を出て行った。

「深澤さん、俺の部屋に。加東君。冷やす物を持って来てくれる?」
「はい、直ぐに持って来ます」
「深澤さん、所長室に行こう」

所長室に2人で入ると、アイスバッグを持って、加東さんが入って来た。
「大丈夫ですか?片桐さんは忙しいから、僕が深澤さんを見ます」
「いや、いい。俺がしばらく、深澤さんといるから」
「・・・分かりました」
加東さんは、心配そうな顔をしながら部屋を出て行った。

「俺を庇ってくれたんだね?」
「咄嗟に体が動いていました。良かったです。片桐さんは人前に出るから。私のことなんて、誰も気にしないので・・・」
「そんなことないよ。俺は気にする。こんな綺麗な顔を・・・傷は無いか?」
「出来ても大丈夫です。出来たところで、お嫁にいける気もしませんし、気にしないで下さい」
「その時は・・・俺が責任取るよ」
悲しそうな目に見つめられて、目が離せない。
見つめ合う沈黙の時間。
ほんの数秒が、時が止まったように感じた。
< 48 / 106 >

この作品をシェア

pagetop