true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
お幸せにという片桐さんは、心から祝福してるの?
本当は、まだ想いはあるけど、結婚するから、ただ諦めるしかないだけで・・・
もし、千佳さんに誘われたら・・・
結婚する前の、たった1度だけの関係なら・・・

胸がギュッと締め付けられる中、しばらくして、電話が終わった片桐さんが部屋から出て来て、
「深澤さん、ちょっと」
手招きされて、気持ちが晴れないまま、部屋に入った。

「深澤さん、明日のことは、一緒に食事した後、帰ってから打ち合わせしよう」
「・・・分かりました」
「何かあった?元気無いけど」
「いえ・・・緊張しているだけです」
本当は・・・凄く嫉妬してる。でも、それは口に出来ない。

「気持ちを切り替えて、名前で呼んでごらん?」
名前を呼ぼうとして、少し口を開くけど、声を出せなかった。
呼びたい気持ちと偽りへの悲しみと・・・そして、嫉妬と・・・

「ごめん、意地悪したね。無理しなくていいよ」
眼鏡の奥の哀愁を帯びた目が、胸に突き刺さる。
そんな目で見つめられると・・・

「また後でね。部屋に戻っていいよ、深澤さん」
背を向けて、デスクに向かった。

私は偽りの恋人。その役目を承諾したのは私だ。
勝手に好きになって、勝手に嫉妬してるだけ・・・
気持ちを切り替えた。

「優聖さん。今日は楽しみにしています」
足を止め、振り返った片桐さんは、少し驚いた顔をした後、
「心海・・・頼んだよ」
恋人に語り掛けるような優しい声で返事をして、満面な笑みを浮かべた。

これ以上、好きになったら、自分自身が辛いけど・・・
この時間をまだ味わっていたいって、偽りでも恋人でいる貴重な時間を大切にしたいって、思っちゃう・・・
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