true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
部屋を見渡す亮聖さん。
「珈琲か紅茶しかありませんが、どちらにしますか?」
「じゃあ、紅茶をいただこうかな?」
微笑むと、穏やかな面持ちは、優聖さんとは違う品格がある。

ただ・・・
紅茶を静かに飲む亮聖さんは、何処か儚さを感じる・・・
「優聖に似てないだろ?」
私の心の声に気づいたように、優しい声で言葉を発した。
「えっと・・・はい」
「優秀な弟だからね。どうして、僕が先に生まれたんだろうね」

優聖さんは、いつも亮聖さんを気にかけていた。
人格者でとても優秀なのに、自信がないだけだって。
片桐総合建設を受け継げるのは、亮聖しかいないって。

「僕は、優聖に何も勝てない。両親の心も好きな人の心さえも」
好きな人・・・もしかして、千佳さんのこと、気づいていた・・・

「そんな事ないです。優聖さんは、亮聖さんの事、尊敬しているって」
「兄を立てているだけだよ。いい弟だ。僕は、弟に嫉妬ばかりしてるのに」
「亮聖さん・・・」
「こんなに可愛い彼女と同棲して、自分のなりたい弁護士にもなって、事務所を構えて、敏腕弁護士と評価されて」
「亮聖さんも副社長として」
「長男だから仕方なくだろうね。僕よりも優聖が良かったと、父も思っている。だから、縁談の話も、顧問弁護士の話も諦めないんだ」
「そんなことはありません!」
「心海さん・・・」
「優聖さんは、嘘をつきません。いつも尊敬しているって、自分の無いものを沢山持っていて羨ましいって」
「優聖が?」
「もっと自信を持って下さい。誰に何を言われても、亮聖さんには、亮聖さんしか持ってない、人を惹きつける力があるんです。私もその1人ですから」
亮聖さんの苦悩に心が痛み、涙が溢れ出す。

「僕のために、泣いてくれるの?」
「生意気なこと言って、すみません・・・実は、私も自信が無く、生きてきました」
それでも、家族に守られて、素敵な仲間に出会って、優聖さんに愛を沢山与えてもらって・・・

「でも、私を認め、支えてくれる人達に出会いました。重責を担う亮聖さんと一緒にしてはいけないですが、皆が支えたいと思う亮聖さんもまた、魅力ある人だって、分かって欲しいんです」
溢れ出る涙を拭きながら、亮聖さんに言葉を告げた。

「清純なところに惹かれた」
「えっ?」
「あの優聖が、嬉しそうに話していた通りだね」
亮聖さんがニコッと頬笑み、大きくため息をついた。
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