ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

3・桃のパフェと友人

「……で、引き受けてしまったと」
 
 数日後。私は大学近くのカフェで、親友の百合香と向かい合っていた。
 夏休みも中盤に差しかかった午後、小さなテラス席には、柔らかな夏の風が吹き抜けている。
 思い切って愁さんとのことを打ち明けると、百合香は呆れたようにため息をつき、じっと私を見た。
 その視線に耐えきれず、私はしゅんと肩を落とす。
 
「はい……」
 
 百合香と私は、大学で出会った。
 一見クールで近寄りがたい印象だったけれど、話してみれば面倒見が良くて頼りがいのある人で、今では何でも話せる親友だ。
 軽やかなショートボブが風で小さく揺れ、すらりとした姿はモデルのよう。
 そんな百合香は、私にとってお姉さんみたいな存在だった。

「天音ってほんとお人好しよね」
「だって……困ってるみたいだったし……」

 本当は報酬のケーキセットに釣られたなんて、言えない。
 
「はいはい。でも、実習と恋愛ごっこの両立、ちゃんとできる?」
「恋愛ごっこじゃないよ!」

 思わず声を上げると、百合香は楽しそうに笑った。
 
「それに、実習の準備もちゃんとしてるし。百合香こそ、どうなの?」
「あたしは抜かりなく」
 
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